お姫様は専属総長に溺愛されてみたい。


「婚約が決まった」

祖父の書斎で突如言われた一言。
どうしようもない感情に背後から襲われた。

相手は、名前も顔も知らない大企業の御曹司。
3つ年上の大学生だという。

私はそっと唇を噛み締めた。
いつの間にか、ジワリと視界が滲む。
けれど、私の言葉では、婚約破棄など到底不可能。

「家のためだ。」

たったその一言で、私の夢は簡単につぶされてしまう。

いつもいつだって、私は祖父や父の言うとおりにしてきた。
紫苑女学院の理事長の孫として、恥ずかしく無いように。

でも— —

私にも、叶えたい未来がある。
あったこともない人と後継ぎを産むための結婚なんて・・・・・・・・。
そんなの、イヤだ。

「・・・せん。」

気づいたら、拳を振るわせて、精一杯唇を動かしていた。
祖父が弾かれたように顔を上げ、私を睨みつける。

「は?」

「そんな・・・、会ったこともない人と結婚なんて、したくありません。」

初めての反抗だった。これまで何回も制限されてきた行動。
今まで受け入れを強いられてきた。
だから、これからも受け入れを強いられるだろうと。

分かってはいた。

けれど・・・、私はもう我慢の限界だ。