お姫様は専属総長に溺愛されてみたい。

その行動が信じられなくて、私はただ瞬きをくり返す。
私のノートの表紙に、くっきりと上履きの黒い跡がついていた。

悔しい思いを飲み込んで、私は二つのノートを拾い上げる。
目の前がくらんで、上手く歩けない。

困ってるのに、誰ひとり助けてくれない。
・・・当然だ。
うん、これが当然。

そんなのわかってる。でも、辛い。

そのとき、後ろに気配を感じた。
教室の後ろにあるロッカーに、榊くんがもたれかかっている。

(どうして・・・・助けてくれないの?)

わかってはいても、どうしても助けを求めてしまう。
胸がギュッと痛む。

助けてくれないのが悲しい。辛い。逃げ出したい。
・・・・でも、それ以上に予想以上に弱い自分がイヤだった。

それから、私はことあるごとに小さな嫌がらせを受けた。
ノートを踏んづけられ、無視をされ、「お嬢様なら金持ってんだろ」と、お金を要求してくる始末。
そのたびに総長は私を見ていたけれど、助けてはくれなかった。
しばらく見つめた後、ふいっと顔を背けてしまう。

そしてとどめは、「紫苑の理事長の孫なんだよ、こいつ」

と、大声で暴露されてしまった。その時の人々の奇異の滲んだ目線が忘れられない。
まるで、『ここはお前が来ていい場所じゃねぇ』と言いたげな表情で冷たい目を向けられた。