恋を知った塩崎さんがなんか甘い。 〜アイドルだと思っていた推しは、感情ゼロのAIでした〜

「──はい?」



私は聞き返す。

付き合う?何を言っているんだ?

それに、誰と。



「いつも美味しいおにぎり、ありがとうございます」

「えっ??」



私が弁当屋で働いていることを知っている?

しかも、対面のないこの人が?

ど、どういうこと?



「塩崎という名前に聞き覚えは……?」

「ありますけど……し、塩崎さんがどうしたんですか」



いつ襲われても倒せるように身を固める。

この人は普通の人じゃない。

お店の常連さんのこと知ってるなんて

しかも、それを利用しようとしている?



「それ、僕です」


抑揚のない声で宮瀬朔太郎そっくりさんが言った。

私は息を荒げる。

茫洋とした部屋に、二人残された気になった。



「え?えっと」

「塩崎慧夢です」



私が混乱していると、彼──塩崎慧夢は、先ほどと同じような抑揚のない声でボソボソと語り出した。




「本名はM-CO3Kと言います。まあ、そこは理解しなくていいんですけど」

「…………?」

「ほどよい彼女、探してまして」



私は息を荒くして、目をかっ開く。

細すぎる身体には似合わない動揺っぷりだ。



「どうして、ですか……?」



震える声を振り絞って塩崎さんを見つめた。

その時、初めて塩崎さんが笑ったのを見た。



「宮瀬朔太朗は死にましたから」