恋を知った塩崎さんがなんか甘い。 〜アイドルだと思っていた推しは、感情ゼロのAIでした〜

部屋に入れられて、とてつもない恐怖に震えた。

人の家に勝手に上がるなとあれほど勉強させられたのに。

どうしよう。

私は胸を抱えて泣き崩れる。突然涙が止まらなくなったのだ。



「何か辛いことでもありましたか?」



彼の質問にも答えられない。

なんで泣いちゃうんだろう、私。



『せんせー唐沢がまた泣いてまーす』

『いい加減にしろって』

『鬱陶しい』



過去の記憶が蘇る。

相手も悪口を言っているつもりじゃないんだろうけど、

どうしても辛くなっちゃって。

学校の先生もそんな私に飽き飽きしていた。



『ほんと最近の学生は「いじめいじめ」とうるさいね』



周りの環境が自分に合っていなかったんだと思う。

だから、どんどん小心者になっていった。

会話も苦手で、人見知り。

そんな毎日の中で、宮瀬くんを見つけた。

キラキラ王道アイドルのパフォーマンスに、最初はすっごくイライラしたけど

いつの間にか、それに惹かれてしまっていた。

皮肉のように、「陽」の存在を愛している。

自分が怖かった。

でも、宮瀬くんが私の制御剤になってくれたから、私は今ここで息をしているんだと思う。



「……そんなに泣かないでください。せっかくのお顔が台無しですよ」



ピンク色の髪の毛の隙間から覗く二つの瞳に感情はなかった。

言わないといけないことをただ言っているみたい。



「お名前なんていうんですか」



いきなり名前を聞かれてびっくりしたけど、頑張って答える。



「こむぎ……唐沢こむぎ」

「こむぎさん……ですか」



彼は優しいその手で私の手を掴んだ。包み込むように、指が触れ合う。



「突然ですが、付き合いませんか?」