ことの始まりは数ヶ月前。
「あ、宮瀬くんから【signal】きてる」
私──唐沢こむぎはごく普通の20歳女子。
いや、普通じゃないか。
友達も多くないし、休日は基本ぼっち。
でも、それでいいんだ。
《こむぎは今元気かなー?》
白い服に身を包んだ、ピンク髪の人懐こそうな青年。
アイコンだけで心拍数が上昇する。
私は急いで返信した。
〈はい!元気です!!!〉
〈今日も宮瀬くんの曲聴きながら頑張ってる!〉
既読はまだつかない。
それは相手が忙しい証拠。
だって宮瀬くんは王子様だから。
国民的ソロアイドル、宮瀬朔太朗くん。
彼は私の『最推し』で
私の『薬』。
彼は今もどこかで暮らしている。
もしかしたら高校に行っているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
宮瀬くんが生活してる姿なんて想像できないよ!!
『ファンのみんなは俺の全部だぞー!!』
前のライブで、宮瀬くんはこんなことを言っていた。
ファンのみんなは彼の太陽。
そして、彼にとっての『全部』。
さすが国民の王子様。
もうとろけちゃうよ。
『でも正直、恋とか愛とかわかんないんだよねー』
これは絶対嘘だ。
アイドルといえど、恋を体験したことがない20歳がいてたまるものか。
彼と恋できたら……
「おはよう、こむぎちゃん。そんなに泣かないで」
とか言って起こしてもらいたいなー。
妄想だけは膨らんでいく。
まあ、かくいう私も恋愛には疎かった。
なんというか、一途な人に出会えないんだよね。
今まで2回付き合ったことがあるけど、どっちの人にも飽きられてフラれちゃった。
アイドルオタクなのがマイナスらしくて。
はあ、せっかくの推しなのに。
まあ、あれっきり友達に推しを紹介することは無くなったけど。
スマホに視線を落とす。ブルーライトの画面と対面した。
このアプリ【signal】は登録者のアーティストと好きなことを本人が許す限り話せるというアプリだ。
しかし知名度が低いので、そもそもアーティストが利用していないということもある。そのためアプリ会員数は少ないらしい。
わたしは推しがいるかもしれないという“もしかしたら”に懸けて、
見事うまくいったのである!!
どうせなら推しには本名で呼ばれたい。
だから、本名のこむぎで登録したんだ。
すると
《はじめまして〜》
《アイドルの宮瀬です!》
《君が初めてのトーク相手だよ!嬉しいな》
《こむぎちゃん……でいいかな?》
すぐにたくさんのメッセージを送ってくれたんだ。
もう歓喜
推しの「初めて」なんて嬉しすぎる……!!
〈はい!とっても可愛いあだ名ありがとうございます!!〉
〈これからよろしくです!〉
《うん!よろしくー》
それから始まった私たちだけのトーク。
〈いや今日ほんと朝からお腹痛くてさー〉
〈男の子にはわかんないかもだけど〉
こういうディープな悩みも、彼になら言えた。
《大丈夫?俺が心配していいのかわかんないけど、》
《気をつけてね》
《お大事に……》
彼が優しく返してくれるから、安心して相談できた。
でも、これもあんまり長いこと続かなかったんだ。
《ライブなう》
大きな写真とともに送られてきたメッセージ。
それは私が落選したライブの会場裏だった。
(そういえばライブどうなってるんだろ)
SNSを覗くと、とある投稿が目に飛び込んできた。
宮瀬くんからシグナル来たー!!嬉しー!!!
#宮瀬朔太朗 #signal #シグナル
という内容の投稿。
いや、いつかこうなるってわかってたよ。
あんなに顔が良くて、可愛くて、優しいアイドル。
売れないわけないよね。
なんでだろう。
なぜか涙が込み上げてくる。
これだから私は私が嫌いだ。
すぐ泣くし、笑顔で取り繕っても、本性をさらけ出せない。
悔しい?
そんなはずないのに。
だんだん息が荒くなり、ベッドに縋り付く事になる。
推しを独り占めできていた。
そんな夢も、瞬く間に砕け散ったのである。
「あ、宮瀬くんから【signal】きてる」
私──唐沢こむぎはごく普通の20歳女子。
いや、普通じゃないか。
友達も多くないし、休日は基本ぼっち。
でも、それでいいんだ。
《こむぎは今元気かなー?》
白い服に身を包んだ、ピンク髪の人懐こそうな青年。
アイコンだけで心拍数が上昇する。
私は急いで返信した。
〈はい!元気です!!!〉
〈今日も宮瀬くんの曲聴きながら頑張ってる!〉
既読はまだつかない。
それは相手が忙しい証拠。
だって宮瀬くんは王子様だから。
国民的ソロアイドル、宮瀬朔太朗くん。
彼は私の『最推し』で
私の『薬』。
彼は今もどこかで暮らしている。
もしかしたら高校に行っているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
宮瀬くんが生活してる姿なんて想像できないよ!!
『ファンのみんなは俺の全部だぞー!!』
前のライブで、宮瀬くんはこんなことを言っていた。
ファンのみんなは彼の太陽。
そして、彼にとっての『全部』。
さすが国民の王子様。
もうとろけちゃうよ。
『でも正直、恋とか愛とかわかんないんだよねー』
これは絶対嘘だ。
アイドルといえど、恋を体験したことがない20歳がいてたまるものか。
彼と恋できたら……
「おはよう、こむぎちゃん。そんなに泣かないで」
とか言って起こしてもらいたいなー。
妄想だけは膨らんでいく。
まあ、かくいう私も恋愛には疎かった。
なんというか、一途な人に出会えないんだよね。
今まで2回付き合ったことがあるけど、どっちの人にも飽きられてフラれちゃった。
アイドルオタクなのがマイナスらしくて。
はあ、せっかくの推しなのに。
まあ、あれっきり友達に推しを紹介することは無くなったけど。
スマホに視線を落とす。ブルーライトの画面と対面した。
このアプリ【signal】は登録者のアーティストと好きなことを本人が許す限り話せるというアプリだ。
しかし知名度が低いので、そもそもアーティストが利用していないということもある。そのためアプリ会員数は少ないらしい。
わたしは推しがいるかもしれないという“もしかしたら”に懸けて、
見事うまくいったのである!!
どうせなら推しには本名で呼ばれたい。
だから、本名のこむぎで登録したんだ。
すると
《はじめまして〜》
《アイドルの宮瀬です!》
《君が初めてのトーク相手だよ!嬉しいな》
《こむぎちゃん……でいいかな?》
すぐにたくさんのメッセージを送ってくれたんだ。
もう歓喜
推しの「初めて」なんて嬉しすぎる……!!
〈はい!とっても可愛いあだ名ありがとうございます!!〉
〈これからよろしくです!〉
《うん!よろしくー》
それから始まった私たちだけのトーク。
〈いや今日ほんと朝からお腹痛くてさー〉
〈男の子にはわかんないかもだけど〉
こういうディープな悩みも、彼になら言えた。
《大丈夫?俺が心配していいのかわかんないけど、》
《気をつけてね》
《お大事に……》
彼が優しく返してくれるから、安心して相談できた。
でも、これもあんまり長いこと続かなかったんだ。
《ライブなう》
大きな写真とともに送られてきたメッセージ。
それは私が落選したライブの会場裏だった。
(そういえばライブどうなってるんだろ)
SNSを覗くと、とある投稿が目に飛び込んできた。
宮瀬くんからシグナル来たー!!嬉しー!!!
#宮瀬朔太朗 #signal #シグナル
という内容の投稿。
いや、いつかこうなるってわかってたよ。
あんなに顔が良くて、可愛くて、優しいアイドル。
売れないわけないよね。
なんでだろう。
なぜか涙が込み上げてくる。
これだから私は私が嫌いだ。
すぐ泣くし、笑顔で取り繕っても、本性をさらけ出せない。
悔しい?
そんなはずないのに。
だんだん息が荒くなり、ベッドに縋り付く事になる。
推しを独り占めできていた。
そんな夢も、瞬く間に砕け散ったのである。

