「私は彼に視線を奪われてなんていないわ!ただ視界に入っただけ!それなのにクビにするなんて信じられない!」
「庇うのかい?君の視線を奪ったやつを?…ああ、クビだけでは物足りないな」
声を荒げた私に、ルーカスはとても不愉快そうにしているが、それは私に対してではなく、先ほどの従者に対してだ。
「いっそのこと、アイツはこの世から消すべきだ」
屋敷から消すどころか、この世界から存在自体を消そうとするとは!
ぶっ飛びすぎだわ!ルーカス!
「ルーカス!これ以上は本気で怒るわよ!?嫌いになるよ!?それでもいいの!?」
「それだけはやめておくれ、俺のゾーイ。俺には君だけなんだから」
必死に叫ぶ私に間髪入れず、申し訳なさそうな表情を浮かべるルーカス。
けれど、これはただ私の怒りを鎮めるために言った言葉に過ぎない。
彼はこのようなことをもう何百、何千と数えきれないほど繰り返しているのだ。
ルーカスの姿に呆れていると、ルーカスは「機嫌を直して。俺のゾーイ」と私の手の甲に唇を寄せてきた。
綺麗な唇がゆっくりと触れ、離れていく。
それだけで心臓がバクバクして、騒がしい。
私もルーカスが大好きなの。
優しい性格も、柔らかな表情も、美しい見た目も。
何もかも彼という存在は尊く、愛おしい。
息の詰まるほど愛されて、幸せ者だと思う。
愛のない政略結婚なんて、この世界では当たり前。
それでも私たちは奇跡のように愛し合っている。
だが、それでも。
「ああ、ゾーイ。愛しているよ。願わくば君の世界が俺だけでありますように」
彼の愛はやっぱり、重すぎる。
息ができなければ、誰も生きていけないわ。



