「……テオ、それは――」
言いかけた、その時。
「失礼します」
低く、きっぱりとした声。
はっとして振り向くと、
いつの間にか部屋の扉が開いていた。
「ユ、ユウリ……?」
テオも肩をびくっとさせ、
慌てて距離を取る。
「……テオ」
冷たい視線が、
真っ直ぐに突き刺さる。
「お嬢様は療養中です」
「接触は最小限に」
「窓からの侵入は論外」
淡々と、
しかし一切の逃げ道を残さない口調。
「やば…」
焦り出したテオ。
さっきまでの色気はどこへやら、
「……じゃ、また」
小さく手を振って、
そそくさと窓の外へ下がっていく。
完全に姿が見えなくなってから、
ユウリは静かにカーテンを閉めた。
「……お嬢様」
振り返る。
「熱が下がってきたからといって、
油断は禁物です」
「心拍数も、
不用意に上げないように」
……全部、見られてた。
「……すみません」
小さくそう言うと、
ユウリは一瞬だけ目を伏せてから、
「……いえ」
「ですが」
「殿下に知られたら、
もっと大事になりますので」
淡々と言いながら、
それでもどこか、
守るように立っている。
胸元で、
四葉のクローバーを握りしめる。
幸せになる、か。
……今日は、
いろんな意味で、刺激が多い日だ。

