第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「……テオ、それは――」

言いかけた、その時。

「失礼します」

低く、きっぱりとした声。

はっとして振り向くと、
いつの間にか部屋の扉が開いていた。

「ユ、ユウリ……?」

テオも肩をびくっとさせ、
慌てて距離を取る。

「……テオ」

冷たい視線が、
真っ直ぐに突き刺さる。

「お嬢様は療養中です」

「接触は最小限に」

「窓からの侵入は論外」

淡々と、
しかし一切の逃げ道を残さない口調。

「やば…」

焦り出したテオ。
さっきまでの色気はどこへやら、

「……じゃ、また」

小さく手を振って、
そそくさと窓の外へ下がっていく。

完全に姿が見えなくなってから、
ユウリは静かにカーテンを閉めた。

「……お嬢様」

振り返る。

「熱が下がってきたからといって、
油断は禁物です」

「心拍数も、
不用意に上げないように」

……全部、見られてた。

「……すみません」

小さくそう言うと、
ユウリは一瞬だけ目を伏せてから、

「……いえ」

「ですが」

「殿下に知られたら、
もっと大事になりますので」

淡々と言いながら、
それでもどこか、
守るように立っている。

胸元で、
四葉のクローバーを握りしめる。

幸せになる、か。

……今日は、
いろんな意味で、刺激が多い日だ。