第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

その言葉に、思わずこちらも笑みを返した――その瞬間。

ガチャッ。

「ねぇ、さっきさー、レオがでっかい花瓶運んでたんだけど――」

お嬢様が勢いよく入ってきた。

「お、お嬢様!」

レイの半裸姿を目にした瞬間、お嬢様の顔が真っ赤になる。

「え、し、失礼しました!!」

バタンッ!

扉が閉まる。

……と思ったら。

ガチャッ!!

「レイさん!!」

「は、はいっ」

レイがびくっと返事をする。
お嬢様は今度は迷いなく部屋に入ってきた。

「お嬢様、だめです!」

私は慌てて前に立ちふさがる。

「なんで!? ちょっとだけ! ちょっとだけ見せて!!」

「いま着替え中ですよ! はやく出てください!」

「いや! せっかくの目の保養なんだよ!? こんな機会ないんだよ!?」

「殿下に見せてもらえばいいでしょう。あの人なら喜んで脱ぎますよ」

「ちがうんだよー!」

お嬢様は私の腕を押しのけようとしながら、必死に訴える。

「ディランの身体は綺麗だけど……私が気になるのはレイさんのほう!!」

抵抗が強い。
というか、気持ちが強すぎる。

レイはタオルを胸に当てたまま、困ったように笑っている。

「お嬢様……落ち着いてください」

「落ち着いてるよ!? むしろ冷静だよ!? だって……」

お嬢様はレイを指さし、真剣な顔で言った。

「こんな綺麗な筋肉、見逃せるわけないじゃん!!」

「お嬢様、聞こえてます」

「ひゃっ……! ち、違うの! その……純粋に興味が……!」

お嬢様は両手をぶんぶん振りながら、しかし視線はレイの筋肉に釘付け。

「レイさん、背中も見せてもらっていいですか?」

「お嬢様!?!?」

レイはさすがに後ずさる。

「だって……すごいんだもん……!」

お嬢様の目は完全に“美術品を見る目”だった。