「……わ、わかった」
「では。エスコートしてください」
その言葉に戸惑って立ち尽くしていると、アリスがふっと言った。
「……わかりました。お嬢様に、似せましょう」
「……?」
何を言い出すんだ、と思った次の瞬間。
アリスは小さく咳払いをする。
「ねぇ、テオ。
私を、ダンスに誘ってくれる?」
……
「……似てない」
思ったまま口にすると、
「チッ」
盛大な舌打ちが返ってきた。
「……ごめん」
反射的に謝る。
「せっかく、お嬢様からこのドレスをお借りしているんですから」
そう言われて、改めてアリスの装いを見る。
確かにそれは――お嬢様が、昔身にまとっていたドレスだった。
『ねぇ、テオ』
そう呼びかけたお嬢様の記憶が自然とよみがえる。
スミレ色と桃色の髪。
柔らかくて、少しだけ照れたような笑顔。
――気づけば、俺は手を差し出していた。
「……俺と、踊ってくれますか?」
その言葉に、アリスは満足そうに微笑み、手を取る。
お嬢様ではない人と踊るのは……不思議な感覚だ。
相手の呼吸を感じ、歩調を合わせる。
踊るというのは、思っていた以上に難しい。
「……なかなか、ましですね」
アリスの評価に、思わず口元が緩む。
「……ほんと?」
「ええ。足を踏まれる覚悟はしていましたから。
ヒールの甲に針を仕込むか、少し悩んだほどです」
……この人の言葉が、どこまで本気でどこから冗談なのか。
未だに、判断がつかない。

