宝石事件の数か月前。
トワと二人、穏やかなティータイムを過ごしていた。
「お嬢さーん!」
「なに、レオ?
このシフォンケーキ、すごくおいしい」
「はい! おいしいです!」
トワも頬張りながら、元気よく頷く。
「ありがとうございます!
中にくるみが入ってるんですよ!」
一瞬間を置いて、はっとしたように身を乗り出す。
「……じゃなくて!
これです!」
「なにそれ?」
トワと2人で、きょとんと首をかしげる。
レオが差し出してきたのは、画用紙に描かれた魚の絵だった。
「これ! 珍しい魚らしいんです!」
「へぇ……」
「エンジェルドラゴン!!」
「……へぇ」
「これ、探しに行きましょ!!」
「えっ!?」
「幻の食材らしくて、
しかもすっごくおいしいらしいんです!」
「ね! 行きましょうよー!!」
レオはそう言って、全身で嬉しさを表すように大きく揺れた。
「その絵、見せて」
「はい、どうぞ!」
レオから受け取り、目を落とす。
――上手だな。
鋭い口元に、長く伸びた髭。
どことなくドラゴンを思わせる、迫力のある魚だった。
それにしたって、
前にユウリが描いた私の似顔絵より、だいぶ上手だ。
ユウリが描いた私の顔は、
鋭い眼光で、まるで悪魔のようだった。
「レオって、絵が上手なのね」
「ありがとうございます!」
ぱっと顔を輝かせ、レオは胸を張る。
「料理って、盛り付けとかケーキとか、
デザイン画を描くじゃないですか!」
「だから、これくらいなら描けますよ!」
ふふん、と得意げに鼻を鳴らした。
「いいよ。
行こう」
急ぎの仕事もないし、
一日くらいなら問題ないだろう。
「やったー!!!」
レオが両手を上げて跳ねる。
「もちろん、トワ坊ちゃんも行きますよね!」
「う、うん」
少し間を置いて、トワも小さく頷いた。

