第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ユウリとのダンスが終わり、
私は自然と、会場の隅に立つ彼へ視線を向けた。

壁際で腕を組み、
華やかな光から一歩引いた場所にいるセナ。


「ねぇ、セナ」

「お嬢様」

「なにしてるの?」

「……なにも」

「居心地、悪そうだね」

「こういう場には慣れていません。
剣を持たない時間のほうが、落ち着かなくて」

騎士として在ることが、
彼の居場所なのだと改めて思う。

「セナは、ダンスに誘ってくれないの?」

意地悪だとわかっていて、わざと笑った。

「お嬢様」

「私の専属護衛騎士なんだから、
ダンスくらいできるよね?」

「……まったく」

呆れたように言いながら、
その声はどこか柔らかい。

「人を巻き込むのが、本当に上手い」

「ありがとう」

「褒めてません」

ふっと、2人で息を漏らすように笑った。