第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

守ると決めたのは、今に始まったことではない。

あの方が泣いた日も、
笑った日も、
剣を取ると決めた日も。

すべての傍らにいると、私は決めていた。

――その頃。

執務室の扉の外。

お嬢様は壁にもたれ、何食わぬ顔で立っていた。

「……お嬢様、盗み聞きですか?」

「全部は聞こえてないよ。ちょっとだけ」

悪びれもせず、肩をすくめる。

「お父様ってさ、ユウリには優しいよね」

「……そうでしょうか」

「そうだよ。かなり気に入ってる。
 私より信頼されてるんじゃない?」

冗談めいた口調。
けれど、その奥には微かな寂しさが混じっていた。

私は、ただ微笑む。

「それでも私は――」

一歩下がり、いつもの距離で頭を下げる。

「お嬢様の執事であることを、誇りに思っております」

それ以上の言葉は、必要なかった。

想いは、口にしないからこそ守れるものもあるのだから。