一瞬で、記憶が蘇る。
「……懐かしい」
声が、自然と柔らぐ。
「まだ、持っててくれてたんだ」
あれは出会って間もない頃。
幼くて無鉄砲で、それでも真っ直ぐに「騎士になりたい」と言った少年に渡したものだった。
「はい」
セナは、迷いなく頷く。
「俺にとっては――剣より大事な宝物です」
「それ、騎士として言っちゃだめじゃない?」
「……そうですね」
ふふ、と小さく笑い合う。
何気ないその時間が、ひどく愛おしかった。
「ティアナ」
久しぶりに名前を呼ばれ、思わず瞬きをする。
顔を上げると、セナは真っ直ぐにこちらを見つめていた。
「もう、昔の弱い俺ではありません」
静かで、揺るぎない声。
「俺は騎士です。
必ず、貴女の未来が明るいものであるよう――守り抜きます」
――本当に、ずるい。
やっと想いを断ち切ったはずなのに、
こんなふうに簡単に心を揺らがせる。
やんちゃで無鉄砲だった少年は、今や立派な騎士になっていた。
優しさも、誠実さも、何一つ変わらないまま。
だからこそ――
この気持ちは、悟られないようにすると決めた。
そして、きちんと胸の奥へ仕舞う。
「昔からセナはかっこいいよ。
でもね、守るんじゃなくて――一緒に立ち向かうの」
「……そうでしたね」
セナは柔らかく笑う。
私も、できるだけ自然に微笑み返した。
「でも、頼りにしてるよ。
私のナイト」
その言葉に、セナは一瞬だけ目を見開き――
やがて、穏やかな微笑みを浮かべた。
この先に待つのは、きっと過酷な運命。
それでも今だけは…
淡い青から、角度によって紫へと変わる――
夜と朝の境目を閉じ込めたような宝石、
優しい風が、2人の間を通り抜ける。
タンザナイトが、静かに揺れていた。

