第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「できました」

セナが私から一歩離れる。
その距離が、少しだけ名残惜しいと感じてしまった。

「どう? 似合ってる?」

明るい声を意識して尋ねる。

「とても、お綺麗です」

その言葉に満足し、思わず微笑む。
少し照れたように視線を逸らすセナの表情が、どこか懐かしい。

「普段お召しになっているものに比べれば、見劣りするかもしれませんが……」

「そんなことないよ。
どんな豪華な宝石より、ずっと嬉しい」

そう告げると、セナは小さく目を瞬かせた。

「実は……ラルクル商会に頼んで作ってもらったんです」

――ラルクル商会。

以前、仕事で一緒に訪れた場所。
職人の説明を真剣に聞いていた、横顔が脳裏に浮かぶ。

「……ありがとう」

自然と、頬が緩んだ。

「すごく、嬉しい」

「昔のお礼も兼ねて、ですから」

「昔?」

首を傾げると、セナは少し困ったように笑う。

「ずいぶん前に、お嬢様からいただいたブレスレットです。
さすがにチェーンが傷んでしまって……最近、ピアスに直してもらいました」

そう言って、セナは髪をかき上げた。

耳元で、淡く光を反射する水色の宝石。
アクアマリン。