「殿下ぁぁ……」
「……蝋燭の火、気をつけてね」
どうやら、テーブルの上の蝋燭を気にしてくれているらしい。
(そんなの、今どうでもいいのに……)
ソファに座っている殿下の前まで詰め寄る。
「前から思ってたんですけど」
「うん」
「殿下、やることがいちいち回りくどいんですよ!」
少し前屈みになって指を突きつける。
「本だってそうです。どうしてユウリに預けるんですか。直接渡しにくればいいじゃないですか!
……まあ、10年も気づかなかった私が一番アホなんですけど」
勢いで言い切ると、殿下は目を瞬かせ、それから困ったように――いや、楽しそうに笑った。
「今度からは、直接持って行くよ」
「そういうところです!」
なんでそんなに穏やかにニコニコしていられるんだ、この人は。
「殿下って、いつも笑ってますけど……内心、すごく冷めてますよね」
「うーん」
自分の頬を指でかきながら、殿下は少し考える素振りを見せる。
「そうかな」
その仕草すら余裕があって、腹が立つ。
感情を隠して、穏やかに振る舞う。
それ自体は、私も似たところがあるからわかる。
でも殿下のそれは、少し違う。
もっと深いところが、冷たくて暗い。
良い意味でも悪い意味でも、何事にもどこか無頓着で、距離を置いている感じがする。
――まあ、それも仕方ないのかもしれない。
王族という立場。
常に見られ、測られ、利用される世界で生きているのだから、感情を剥き出しにする方が無謀だ。
「殿下の立場なら、全部に本気になるなんて無理ですよね」
少し声のトーンが落ちる。
「取り繕って、感情を隠して……そうしないと生き残れない」
殿下は、そこで初めて笑うのをやめた。
「……ティアナ嬢は、俺をよく見ているね」
低く、静かな声。
「……蝋燭の火、気をつけてね」
どうやら、テーブルの上の蝋燭を気にしてくれているらしい。
(そんなの、今どうでもいいのに……)
ソファに座っている殿下の前まで詰め寄る。
「前から思ってたんですけど」
「うん」
「殿下、やることがいちいち回りくどいんですよ!」
少し前屈みになって指を突きつける。
「本だってそうです。どうしてユウリに預けるんですか。直接渡しにくればいいじゃないですか!
……まあ、10年も気づかなかった私が一番アホなんですけど」
勢いで言い切ると、殿下は目を瞬かせ、それから困ったように――いや、楽しそうに笑った。
「今度からは、直接持って行くよ」
「そういうところです!」
なんでそんなに穏やかにニコニコしていられるんだ、この人は。
「殿下って、いつも笑ってますけど……内心、すごく冷めてますよね」
「うーん」
自分の頬を指でかきながら、殿下は少し考える素振りを見せる。
「そうかな」
その仕草すら余裕があって、腹が立つ。
感情を隠して、穏やかに振る舞う。
それ自体は、私も似たところがあるからわかる。
でも殿下のそれは、少し違う。
もっと深いところが、冷たくて暗い。
良い意味でも悪い意味でも、何事にもどこか無頓着で、距離を置いている感じがする。
――まあ、それも仕方ないのかもしれない。
王族という立場。
常に見られ、測られ、利用される世界で生きているのだから、感情を剥き出しにする方が無謀だ。
「殿下の立場なら、全部に本気になるなんて無理ですよね」
少し声のトーンが落ちる。
「取り繕って、感情を隠して……そうしないと生き残れない」
殿下は、そこで初めて笑うのをやめた。
「……ティアナ嬢は、俺をよく見ているね」
低く、静かな声。

