「あ、そうだ、これ」
セナが手を差し出した。
「ん?」
私は無意識に手を伸ばす。
そこには、小さな小箱があった。
中を開けると、タンザナイトのピアスが揺れている。
蒼く淡く光る宝石が、一粒ずつ静かに輝いていた。
「……くれるの?」
「お嬢様に似合うと思って」
柔らかい声。
でも、どこか強さも混じっている。
私は小さく笑い、でもどこかぎこちなく、
「ありがとう」とだけ言った。
「つけてみますか?」
「うん、お願い」
そういうとセナの手が、そっと私の髪に触れる。
耳にかかっていた一房を、丁寧に後ろへ流す。
――近い。
耳元に、微かな違和感。
触れられているのは一瞬なのに、
まるで時間がゆっくり流れているみたいだった。
壊れ物を扱うような、優しい手の感触。
息をするのも、忘れてしまいそうになる。
「……じっとしててください」
低く、落ち着いた声。
胸の鼓動が、やけに大きく響く。
この距離、この空気。
騎士と主。
それだけじゃ説明できない何かが、確かにそこにあった。
それでも私は、何も言わない。
言ってしまったら、
この均衡が崩れてしまう気がして。

