「……それより、君の父は?」
殿下の視線が鋭くなる。
デホラ男爵の姿が、この場に見当たらない。
「お父様は……体調を崩しており、寝込んでおります」
「そうか……もういい。帰るとしよう」
殿下はそう言って静かに立ち上がった。
私も自然と後に続く。
雨はさらに強まり、馬車の周囲はぬかるんでいた。靴先がわずかに沈む。
――この雨の中、何が起こるかわからない。
それでも、今はただ殿下に従うしかなかった。
オーウェン団長が何事もないかのように隣へ並び、周囲へ視線を巡らせる。
「雨が強くなってきました。足元にお気をつけください」
そう言われ頭を下げる。
「ありがとうございます」
馬車へ戻る道すがら、私は自分の胸の内を静かに確かめていた。
ナタリーさんのこと。
母のこと。
ニーナの事件。
守るべきものも、わからないことも多すぎる。
それでも――逃げるわけにはいかない。
馬車に乗り込むと、殿下は前方を見据え、淡々と指示を出した。
私はそっと席につき、窓を打つ雨音に耳を澄ませながら、心を整える。
――この先に何が待っているのかは、まだわからない。
それでも、進むしかないのだ。
殿下の視線が鋭くなる。
デホラ男爵の姿が、この場に見当たらない。
「お父様は……体調を崩しており、寝込んでおります」
「そうか……もういい。帰るとしよう」
殿下はそう言って静かに立ち上がった。
私も自然と後に続く。
雨はさらに強まり、馬車の周囲はぬかるんでいた。靴先がわずかに沈む。
――この雨の中、何が起こるかわからない。
それでも、今はただ殿下に従うしかなかった。
オーウェン団長が何事もないかのように隣へ並び、周囲へ視線を巡らせる。
「雨が強くなってきました。足元にお気をつけください」
そう言われ頭を下げる。
「ありがとうございます」
馬車へ戻る道すがら、私は自分の胸の内を静かに確かめていた。
ナタリーさんのこと。
母のこと。
ニーナの事件。
守るべきものも、わからないことも多すぎる。
それでも――逃げるわけにはいかない。
馬車に乗り込むと、殿下は前方を見据え、淡々と指示を出した。
私はそっと席につき、窓を打つ雨音に耳を澄ませながら、心を整える。
――この先に何が待っているのかは、まだわからない。
それでも、進むしかないのだ。

