第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「いただきます」

ディラン殿下は、綺麗な所作でカモのハニーローストのサンドイッチを口に運ぶ。
その優雅さに、思わず目を奪われる。


「うん、とても美味しいね。これを君が作ったの?」

「はい、レオって呼んでください」

「レオは料理人なのかい?」

「はい、お嬢さんの専属料理人です」

レオの緩い喋り方は本当は正さなくてはいけないが、ディラン殿下は気にしていない様子。
――まあ、これでいいか。

「それは羨ましいな。レオのフルコースが食べてみたいね」

「機会があれば!」

「サラッと私の料理人を勧誘しないでもらっていいですかね」

「すまない、そんなつもりではないのだが」

殿下は愉快そうに笑う。
その笑顔に、つい少し警戒心がゆるむ。

「ところで、こちらには何をしにいらしたのですか?」

さっき聞きそびれたことを、改めて尋ねる。

「そうそう、こちらには仕事の関係でね。
ついでに、数カ月前のパーティーの“主犯格”から話を聞こうと思ってね」

ディラン殿下の言葉に、空気が少し引き締まる。
そう、あの暗殺未遂事件――
デホラ男爵とニーナ嬢は罪に問われ、財産を取り上げられ、今は辺境の地で過ごしているという話を思い出す。