第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「うちの使用人が失礼しました」

ユウリがすっと頭を下げる。

「気にしなくていい。おや、君は?」

「トワといいます。2年ほど前から伯爵家の養子としてお世話になっております。
よろしくお願いいたします」

トワは落ち着いた所作で丁寧に挨拶をする。

「初めまして。
賢そうな子だね」

ディラン殿下はトワと目線を合わせ、にこりと笑った。
そして次に視線をルイに移す。

「君はブティック・グロウのルイだね。
噂は以前から聞いている。良いドレスを作ると聞いたよ。
今度、私のもお願いしようかな」

「ええ、喜んで」

ルイも丁寧にお辞儀し、その優雅な所作に殿下も微笑む。

「そういえば、銀髪の彼――セナはいないのかい?」

ディラン殿下からセナの名前が出てくるとは思わず少し驚く。

「ええ、今日は任務に出ております」

「そうか。護衛をつけないとは、少し不用心だよ、ティアナ嬢」

「その心配は無用です」

私は少し冷たく答える。
殿下には関係のないことだと思い、毅然とした態度を崩さない。

「――あの、殿下もお昼どうですか?」

そんな中、レオが何かとんでもない提案を口にした。

「ちょ、レオ。それは――」

「いいのかい? それではお邪魔させてもらおうかな」

気づけば、ピクニックシートにディラン殿下も座っている。
――なんだこの状況は。
穏やかで楽しいひと時だったのに、突然の非日常感が入り混じる。