第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


今日は、休日。
それと合わせてナタリーさんにも会いにいく。

研究者でも、共犯者でもない。
ただ――私の身の回りの世話をしていた人。

それでも、長くこの屋敷に仕えてきた人物だった。

けれど彼女は、もう80近い年齢だと聞いている。
最近は記憶も曖昧で、同じ話を何度も繰り返すことがある、と。

正直に言えば、
何か決定的な情報を持っている可能性は、きっと高くない。

それでも――
会いに行く理由は、一つしかなかった。

母を、
「研究資料」や「死亡記録」としてではなく。

ひとりの女性として、
確かに生きていた“人間”として知っているかもしれない。


けれど――
この一日が、
また何かを動かしてしまう、そんな胸騒ぎもした。