第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

すべてが終わったあと。

人の気配もまばらになった庭で、
トワは私の前に立ち、ぺこりと頭を下げた。

「あの……ありがとうございました」

「いえ」

ユウリが、いつもの穏やかな微笑みを向ける。

私はしゃがみ込み、トワと目線を合わせた。

「トワ。あなたは、私の弟よ」

小さな肩が、ぴくりと揺れる。

「理不尽なことを、我慢しなくていい。
やってもいないことを、受け入れなくてもいいの」

彼の手を、そっと包む。

「そんな時は、ちゃんと私があなたを守る」

まっすぐに、想いを伝える。

「だって――あなたは、私の弟でしょう?」

トワは目を丸くした。

まるで、その言葉の意味を初めて聞いたかのように。

しばらくして、少し戸惑ったように――
それでも、ほんのわずかに口元を緩める。

「……お姉様」

小さな声だった。

けれど確かに、
彼が初めて“家族を選んだ”瞬間だった。