少しの沈黙のあと、レオが珍しく真剣な声で言った。
「ねぇ、お嬢さん。
俺さ、考えるの苦手で、頭より体が先に動いちゃうんだよね」
こちらを見る目は、まっすぐだ。
「だから、はっきり言うよ」
「……うん?」
「お嬢さん、俺ができること、ある?」
一瞬、言葉に詰まる。
「俺、難しいことは分かんないけどさ。
料理は得意だよ。
それに、腕力には自信ある」
そう言って、ぐっと腕を曲げてみせる。
引き締まった筋肉。
さすが元騎士団員だ。
「だからさ」
少し照れたように、でも笑顔は変わらない。
「俺のことも、頼りにしてよ。
お嬢さんが困ってるなら、
俺、絶対力になるから」
その言葉は、重くない。
でも、確かに支えになる重さがあった。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
「……ねえ、レオ」
「ん?」
「これから、きっと大変なことが起きると思うの。
私ひとりじゃ、抱えきれないこともある」
少しだけ、息を整えてから続ける。
「だから……力を貸してほしい」
一瞬きょとんとしたあと、
レオは目を丸くして――すぐに笑った。
「なにそれ!」
軽く膝を叩いて、いつもの調子で言う。
「最初から、そのつもりでしたよ」
「え……?」
「だって俺、
お嬢さんが困ってる顔してるの、放っておけないんで」
迷いのない声。
「命かけろって言われても、たぶん『はい!』って言いますし」
「それは言わなくていいから……!」
思わずそう返すと、レオは声を上げて笑った。
「ははっ! 冗談っす!」
そして、少しだけ真面目な顔になる。
「でも本気です。
お嬢さんが前に進むなら、俺も一緒に行きます」
「後悔、しない?」
「しません!」
即答だった。
「だって俺、
お嬢さんが笑ってるほうが好きなんで!」
その言葉に、胸の奥がふっとほどけた。
「……ありがとう、レオ」
そう言うと、レオは照れ隠しみたいに頭をかいた。
「へへ。
それでいいんだよ」
ベンチの上。
太陽みたいな人が、勇気をくれる。
それぞれ違う形で、
少しずつ、同じ場所に集まり始めている気がした。

