第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ディランに連絡を取る。

呼び出し音は、ほとんど鳴らなかった。
すぐに、繋がる。

『――別れたばかりなのに、もう連絡してくれるとは嬉しいね』

楽しそうな声。
まるで、何事もなかったかのように。

……こっちは、それどころじゃない。

「ディラン。」

声が、自然と低くなる。

「話があります。」

一瞬の沈黙。
画面越しでも分かるほど、空気が変わった。

『……なにかな』

私の表情を悟ったのだろう。
ふざけた調子は消えていた。

「ナタリーさんのこと。
何か、知っていますね。」

はっきり言うと、ディランは小さく息を吐いた。

『……そのことか。』

否定はしなかった。

『知ってるよ。』

胸が、強く脈打つ。

「教えてください。」

間髪入れずに言った。
逃げ道を与えないために。

ディランは少しだけ黙り、それから静かに答えた。

『……わかった。』

そして、続けて。

『すぐ迎えに行く。』

その言葉に、ぞくりとする。

ナタリーさんは本当に死んだのか。
それとも――生きているのか。

ディランは、どこまで知っていて、どこまで関わっているのか。