「……お嬢様。」
その声は、いつもより低かった。
「ナタリー様が、亡くなったとのことです。」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「……うそ、でしょ?」
喉がひりつく。
「まさか……殺されたの?」
「いえ。医師の見解では、病死のようです。」
けれど、その言葉は続いた。
「ですが――ナタリー様が急に具合を悪くされたのは、お嬢様と面会された夜だと。」
胸が、嫌な音を立てて沈む。
「その後すぐ病院へ運ばれ、死亡が確認されたようです。」
「……どこの病院?」
嫌な予感が、はっきりと形を取る。
「セイドリック病院です。」
その名を聞いた瞬間、背筋が凍った。
「セイドリック病院……」
アレキサンドライト王国と、深い繋がりを持つ病院。
王族、貴族、そして――裏の案件も扱う場所。
「……まさか。」
唇が、かすかに震える。
「…関わってる?」
自分でも信じたくなかった。
それでも、疑念は止まらない。
私は懐から、小さなコンパクトを取り出す。
「それは……何ですか?」
「魔宝具よ。ディランからもらったの。」
ユウリの視線が、一瞬だけ揺れた。
――“ディラン”という呼び方に、わずかに反応したのが分かった。
けれど彼は何も言わず、問いただすこともせず、ただ黙って聞いている。
その沈黙が、かえって事態の重さを際立たせた。

