第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

――いつもの背中を、見つけた。

「ユウリ。」

呼び止めると、ユウリは振り返り、慌てた私の様子に目を丸くする。

「どうされました?」

「ナタリーさんに、もう一度会いたいの。」

「……それは、どういうことですか?」

私は息を整えながら言った。

「ナタリーさんは、ボケてなんかいなかった。
知らないふりをしていただけよ。」

そのまま、施設で起きた出来事を、ひとつ残らずユウリに話す。
「後ろの2人は誰?」と聞かれたこと。
数の合わない視線。
そして、あの違和感。

話を聞くうちに、ユウリの表情が変わった。
彼もまた、何かに気づいたように息を呑む。

「……私としたことが……」

私は頷き、そっと掌を開く。

「それで、これ。ナタリーさんから託された花の種。
ラナンキュラスっていうんだって。オレンジの花を咲かせるの。」

小さな種が、静かに光を受ける。

「花言葉は――『秘密』。」

言葉にした瞬間、確信が胸に落ちた。

「ナタリーさんは、何かを知ってる。
それも、かなり重要なことを。」

ユウリは一瞬考え込み、すぐに決意したように頷いた。

「……わかりました。
すぐに施設に連絡します。」

その声は迷いがなかった。