第二部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

テオと別れてから、ベンチに腰を下ろす。
胸の奥がまだ熱くて、冷まそうとしても追いつかない。
覚悟と不安と、ほんの少しの安堵。
いろいろな想いが、静かに交差していた。

「あれー? お嬢さーん?
どうしたの?」

その声は、迷いを吹き飛ばすみたいに明るい。
顔を上げると、太陽みたいな笑顔と、コーラルオレンジの髪がきらきら光っていた。

「……レオ」

「よいしょ。隣、座っていい?」

「うん」

当たり前みたいに隣に腰を下ろすと、レオはにっと笑って、何かを差し出す。

「俺、いいもん持ってるよ。
はい! 半分」

サンドイッチ。
朝ごはんだろうか。
そういえば、まだ何も食べていなかった。

「ありがとう」

半分受け取って、口に運ぶ。

「……美味しい」

「でしょ!」

胸を張るレオ。
その底抜けの明るさと、気取らない優しさに、自然と肩の力が抜ける。

「ごちそうさま」

「お粗末さま!」

「あ、お茶もどうぞ」

「準備いいのね」

「まあね!」

何でもないやりとりなのに、心が少しずつ落ち着いていく。