次の日。
二次試験は、アースシールド♾️埼玉基地で実施された。
基地には、学校のような建物が建ち並んでいて、広大な敷地は高い壁で覆われていた。
この建物の奥には森が広がっていると、お祖父様から聞いたことがあったが、森まで基地の一部だと思うと組織の大きさを痛感する。
建物の前には、一次の合格者がぞろぞろと集まり始めていた。
案内の通り、皆、候補生のスーツを着用している。
玄関に貼ってあった座席表を確認して、月と中に入った。
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
廊下をしばらく歩き、案内された部屋に入る。
広い体育館のようで、舞台があり、係の人がマイクをセットしていた。
舞台から見下ろすフロアには、椅子だけが綺麗に並べられている。
ざっと1000席はあるな。
私は1番前の右端で、月は後ろの後ろの席か。
「あの子、一番前の右端にいる茶髪ロングの子」
「天城糸、美人すぎて実物の破壊力やばいね。芸能人みたい」
「聞こえちゃうって!」
席に着くまでの間に、壁側でグループになっていた女の子たちのキャピキャピした声が聞こえる。
頭をキーンとなり、顔が引きつりそうになったとき「糸、大丈夫だ。俺がいるから!」と月が肩を叩いた。
月は私のことをよく見ているな。
「糸ちゃん…!」
後ろから声をかけられる。
そこには、騒いでいた子ではない、紫色のロングヘアの女子がいた。
「……はい、なんでしょうか」
髪と同じ色の紫の瞳に引き込まれる。
月も隣で「誰?」という顔をしている。
「紫村ココ(しむら・ここ)です。覚えていますか」
「紫村ーーって、もしかしてココちゃん?」
私の反応を見て、優しく微笑んだココちゃん。
ココちゃんのお父さんは、父が隊長を勤めていたときの補佐官だった人。
父が任務に出るときは、紫村さん(ココちゃんのお父さん)がいつも家に迎えにきてくれて、私も顔馴染みだった。
小さい頃に会ったきりだったので、成長したココちゃんを見て、なんだか心が躍る。
もちろんこの間、自分自身も成長しているわけで、成長したココちゃんという言葉は正しくないかもしれないが。
「ココ?」
月は思い出せませんという顔をして、グーにした手を顎に当てた。
「年少の頃、うちで開いたパーティーを覚えているか。ココちゃんは紫村さん……あ、ココちゃんのお父さんと来てくれてたんだ」
「あー、糸の年齢掛ける100発の花火をあげるってパーティーか」
月がひらめいた!とぽんっと手を叩く。
「どうでもいいことは覚えてるんだな」
「なんだよ! 俺にとってはどうでもよくねーぞ!」
隣でプンスカしている月は、まあいいか……。
ココちゃんに久しぶりに会えて嬉しいな。
そういえば、紫村さんは今何をしているのだろうーー。
「糸ちゃんが覚えていてくれて嬉しいな……! 一次は一位通過だったんだ。さすがだね」
ココちゃんは、あまり表情が豊かな方ではないけれど、言葉の端々からあたたかさを感じた。
「一位通過って、なんで知って……」
お祖父様は組織絡みで知っているが、ココちゃんもお父さん経由か…?
「父にこっそり二位通過だと聞いたの。私が糸ちゃんの後ろの席ってことは、糸ちゃんが一位で、通過順位の順番で席に座らせられているんだろうなって予想」
ココちゃんこそ、さすがだ。
隊員の父を持つだけあって、察しがいい。
「げ、じゃあ俺は三位通過かよ。ガーン」
「月くんも久しぶりだね。私は覚えてるよ。今も糸ちゃんのこと好きで隣で守ってるんだね」
「お、お、お、おい! 何言ってんだよ! 好きとか!」
顔だけでなく耳まで赤くなった月は、口を尖らせていた。
「月、冗談だ。間にうけるな。私はココちゃんとふたりで話したいから外してくれ」
「な、なんだよ! お前! ちょっとは気にしろよ!」
月はそう吐き捨てて「便所行ってくる!」とどこかへ行ってしまった。
「月くん、大丈夫かな?」
ココちゃんは心配そうな声色だが、表情は変わらない。
おしとやかな話し方も落ち着いた印象だな。
「大丈夫だ。それにしても、ココちゃん、元気そうでよかった。紫村さんは? 今、何してる?」
父と母が死んでから疎遠になってしまった紫村さんのことを思い出す。
まだ隊員なのだろうか。
父の後、隊長は別の人になったから、補佐官を続けているわけじやないだろうし。
「父は、補佐官をやめて、今は隊員の任務用スーツを作っているの。もう、糸ちゃんのお父さんとお母さんのような強い人たちを死なせないって」
「スーツを作る技術者ってことか。すごいな」
「糸ちゃんに会いたいと思うから、試験が終わったら、ぜひうちに遊びに来てくれない?」
「ココちゃんのお家に伺って、紫村さんにもご挨拶したいな」
首を力強く縦に振り、笑顔を向けるとココちゃんも微笑みを浮かべていた。
ーーガラガラガラ。
試験官らしき人が室内に入ってきて、舞台に立つ。
「じゃあ、また試験後に」
ココちゃんはこそっと私の耳元でそう言って、後ろの席に座った。
正面の試験官の方を向いて座る。
案内を待っていると、永久さんは無事に通過したのだろうかと頭をよぎった。
周りを見渡したけれど、姿が見えない。
受かっていないのだろうか。
試験官がマイクを持って、受験者を見渡す。
「諸君。まずは一次通過、おめでとう。二次試験はツーマンセルだ。これから、腕に巻く端末を配布する。その端末でペアを通知するので、演習場前に移動し、速やかに二人組になるように」
スーツ姿の大人が続々と入ってきて、前から順番に腕に巻くように指示された手のひらサイズの端末を配布する。
「ありがとうございます」
端末を受け取り、腕に装着する。
このスーツの人たちは、試験の運営委員か。
一次試験で、受付ボックスに入れと促していた人もいるな。
「この端末は、試験中に君たちの体調や位置情報などを確認し、もしものことがあれば救助する」
舞台の試験官が案内を続けた。
ペアを通知すると言っていたが、端末は連絡用でも使うのだな。
運営の人が端末を配り終えると、一斉に音がなった。
ーーピロン。ピロン。ピロン。
ペアの名前が通知されたようで、それぞれの端末に目を落とす。
私のペアはーー。
端末に表示されていた名前は「金縄永久」だったーー。
二次試験は、アースシールド♾️埼玉基地で実施された。
基地には、学校のような建物が建ち並んでいて、広大な敷地は高い壁で覆われていた。
この建物の奥には森が広がっていると、お祖父様から聞いたことがあったが、森まで基地の一部だと思うと組織の大きさを痛感する。
建物の前には、一次の合格者がぞろぞろと集まり始めていた。
案内の通り、皆、候補生のスーツを着用している。
玄関に貼ってあった座席表を確認して、月と中に入った。
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
廊下をしばらく歩き、案内された部屋に入る。
広い体育館のようで、舞台があり、係の人がマイクをセットしていた。
舞台から見下ろすフロアには、椅子だけが綺麗に並べられている。
ざっと1000席はあるな。
私は1番前の右端で、月は後ろの後ろの席か。
「あの子、一番前の右端にいる茶髪ロングの子」
「天城糸、美人すぎて実物の破壊力やばいね。芸能人みたい」
「聞こえちゃうって!」
席に着くまでの間に、壁側でグループになっていた女の子たちのキャピキャピした声が聞こえる。
頭をキーンとなり、顔が引きつりそうになったとき「糸、大丈夫だ。俺がいるから!」と月が肩を叩いた。
月は私のことをよく見ているな。
「糸ちゃん…!」
後ろから声をかけられる。
そこには、騒いでいた子ではない、紫色のロングヘアの女子がいた。
「……はい、なんでしょうか」
髪と同じ色の紫の瞳に引き込まれる。
月も隣で「誰?」という顔をしている。
「紫村ココ(しむら・ここ)です。覚えていますか」
「紫村ーーって、もしかしてココちゃん?」
私の反応を見て、優しく微笑んだココちゃん。
ココちゃんのお父さんは、父が隊長を勤めていたときの補佐官だった人。
父が任務に出るときは、紫村さん(ココちゃんのお父さん)がいつも家に迎えにきてくれて、私も顔馴染みだった。
小さい頃に会ったきりだったので、成長したココちゃんを見て、なんだか心が躍る。
もちろんこの間、自分自身も成長しているわけで、成長したココちゃんという言葉は正しくないかもしれないが。
「ココ?」
月は思い出せませんという顔をして、グーにした手を顎に当てた。
「年少の頃、うちで開いたパーティーを覚えているか。ココちゃんは紫村さん……あ、ココちゃんのお父さんと来てくれてたんだ」
「あー、糸の年齢掛ける100発の花火をあげるってパーティーか」
月がひらめいた!とぽんっと手を叩く。
「どうでもいいことは覚えてるんだな」
「なんだよ! 俺にとってはどうでもよくねーぞ!」
隣でプンスカしている月は、まあいいか……。
ココちゃんに久しぶりに会えて嬉しいな。
そういえば、紫村さんは今何をしているのだろうーー。
「糸ちゃんが覚えていてくれて嬉しいな……! 一次は一位通過だったんだ。さすがだね」
ココちゃんは、あまり表情が豊かな方ではないけれど、言葉の端々からあたたかさを感じた。
「一位通過って、なんで知って……」
お祖父様は組織絡みで知っているが、ココちゃんもお父さん経由か…?
「父にこっそり二位通過だと聞いたの。私が糸ちゃんの後ろの席ってことは、糸ちゃんが一位で、通過順位の順番で席に座らせられているんだろうなって予想」
ココちゃんこそ、さすがだ。
隊員の父を持つだけあって、察しがいい。
「げ、じゃあ俺は三位通過かよ。ガーン」
「月くんも久しぶりだね。私は覚えてるよ。今も糸ちゃんのこと好きで隣で守ってるんだね」
「お、お、お、おい! 何言ってんだよ! 好きとか!」
顔だけでなく耳まで赤くなった月は、口を尖らせていた。
「月、冗談だ。間にうけるな。私はココちゃんとふたりで話したいから外してくれ」
「な、なんだよ! お前! ちょっとは気にしろよ!」
月はそう吐き捨てて「便所行ってくる!」とどこかへ行ってしまった。
「月くん、大丈夫かな?」
ココちゃんは心配そうな声色だが、表情は変わらない。
おしとやかな話し方も落ち着いた印象だな。
「大丈夫だ。それにしても、ココちゃん、元気そうでよかった。紫村さんは? 今、何してる?」
父と母が死んでから疎遠になってしまった紫村さんのことを思い出す。
まだ隊員なのだろうか。
父の後、隊長は別の人になったから、補佐官を続けているわけじやないだろうし。
「父は、補佐官をやめて、今は隊員の任務用スーツを作っているの。もう、糸ちゃんのお父さんとお母さんのような強い人たちを死なせないって」
「スーツを作る技術者ってことか。すごいな」
「糸ちゃんに会いたいと思うから、試験が終わったら、ぜひうちに遊びに来てくれない?」
「ココちゃんのお家に伺って、紫村さんにもご挨拶したいな」
首を力強く縦に振り、笑顔を向けるとココちゃんも微笑みを浮かべていた。
ーーガラガラガラ。
試験官らしき人が室内に入ってきて、舞台に立つ。
「じゃあ、また試験後に」
ココちゃんはこそっと私の耳元でそう言って、後ろの席に座った。
正面の試験官の方を向いて座る。
案内を待っていると、永久さんは無事に通過したのだろうかと頭をよぎった。
周りを見渡したけれど、姿が見えない。
受かっていないのだろうか。
試験官がマイクを持って、受験者を見渡す。
「諸君。まずは一次通過、おめでとう。二次試験はツーマンセルだ。これから、腕に巻く端末を配布する。その端末でペアを通知するので、演習場前に移動し、速やかに二人組になるように」
スーツ姿の大人が続々と入ってきて、前から順番に腕に巻くように指示された手のひらサイズの端末を配布する。
「ありがとうございます」
端末を受け取り、腕に装着する。
このスーツの人たちは、試験の運営委員か。
一次試験で、受付ボックスに入れと促していた人もいるな。
「この端末は、試験中に君たちの体調や位置情報などを確認し、もしものことがあれば救助する」
舞台の試験官が案内を続けた。
ペアを通知すると言っていたが、端末は連絡用でも使うのだな。
運営の人が端末を配り終えると、一斉に音がなった。
ーーピロン。ピロン。ピロン。
ペアの名前が通知されたようで、それぞれの端末に目を落とす。
私のペアはーー。
端末に表示されていた名前は「金縄永久」だったーー。


