我が家のジェット機を見送って、試験会場に足を踏み入れる。
「結構いるな!」
「月、行こう」
周りを見渡すと、巨大なドームの前に人が集まっていた。
(構造:円形、天井高:36メートル)
そわそわした同年代もいれば、落ち着いた年上の人もいる。
テーマパークの入場ゲートのような雰囲気だ。
受験者を横目に、試験官の声に耳を傾けて受付を探す。
「受験者は、受付ボックスに入りなさい。身体チェックと同時にボックス内で受付を済ませることができる。結果は本部に通達される」
(受付方式:昨年の試験より導入の受付ボックス、不正防止率99.2%)
案内の通り、人がひとり入れるくらいの箱がドームの前に30箇所ほど設置されていた。
試験を受けるであろう人々が、そのボックスに次々と入っていく。
「列ができてるな、こっちだ、糸! 並ぶぞ」
ボックスに入るためにすでに10名ほどが並んでいる。
ボックスは、歴史の教科書で見た公衆電話ボックスみたいだ。
月が前に並び、私は列の最後尾についた。
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「毎年、一次が筆記で、二次がツーマンセルの実技試験、三次までいけば個人戦らしいぜ」
「ツーマンセルって?」
「2人1組になって協力して試験を受けるんだよ、そんなのも知らんのかお前!」
前に並ぶ人たちが、ははは、と笑いながら会話をしていた。
「二次まで、何人残れる?」
「毎年1000人弱らしい」
「半分は減るな…」
また、会話が耳に入ってきて、周りを見回しながら人数を把握する。
「月、半分じゃないな。減るのは3分の2だ」
月の耳元に顔を近づけてこそっと伝えると、月は前を向いたままこそっと答えた。
「ああ、今年の受験者はざっと3000人ってとこか」
(過去10年平均:2974人)
前に並んだ人たちは話を続ける。
「合格者の人数は、決まってるのか?」
「いや、年によってバラバラらしいぜ。去年は4人だった」
これまでの試験の傾向は全て頭に入っていた。
(合格者の平均:3000人分の10〜6人)
「同世代の受験者が多そうだな。俺らみたいに12歳になって試験を受ける人と、去年か一昨年に落ちて再チャレンジしてる人って感じか」
「去年、合格者4人の中にひとり12歳がいたらしいぞ」
「まじか、すげえなそいつ」
列が進む。
前のグループのひとりがボックスに入ると、ほかの人たちはしんと静かになった。
体力と精神力だけでなく、ツーマンセルで動くときの戦法や状況把握能力など、隊員に求められる能力の幅は広い。
12歳での合格は稀だ。
さらに列が進み、月の番が来た。
「お先!」
「わざわざ言わなくていい」
へへへっ!と笑いながらボックスに入る月。
今回の試験で必ず合格しなければならない。
お祖父様の期待に応えるためだけではない、この地球のために、1日でも早くアースシールド♾️の一員になるのだ。
まあ、今まで試験に落ちたことがないが。
月がボックスから出てきて「どーぞ!」とドアを開ける。
「月、先に行っててくれ」
「ああ、試験が終わったらジェット機を降りた入り口あたりで待ち合わせよう。じゃあな」
月と入れ替わってボックスの中に入る。
ーーウィーン。
《チェック、動かないでください》
目の前にはモニター画面があり、自分の体の形の映像が頭から足まで緑色になっている。
音声で案内され、赤いライトに全身を照らされた。
そのライトは上下に動き、体の中まで念入りにチェックしているようだった。
モニターの中の映像は、部分的に赤くなったり黄色くなったりする。
《受験番号0001、天城糸、受け付けました。健康状態よし、持ち物問題なし、不正行為なし、第一次の試験会場へ移動してください》
ーーガチャ。
案内が終了してボックスを出る。
お祖父様の力で、受験番号は1番か。
自分で言うのもなんだが、親の七光りもあるのだろうか。
周りを見渡すと、ワクワクした顔、緊張した顔、浮かない顔ーー様々な表情人々がいる。
その人たちに背中を向け、第一試験会場へ向かった。


