鶴先生が残り一体を片付けた。
私とココちゃんと永久さんは、強張っていた体をやっと緩めた。
鶴のような美しい見事な一撃だったな。
「糸、永久。大丈夫だった?」
鶴先生の優しい声に、改めて安堵する。
それから、私と永久さんは、《子》と《巳》のこと、神先生が狙われていること、十二凶の計画、彼らが宇宙人を操っていることなどを簡潔に話した。
「……そうなのね」
鶴先生が難しい顔をしている。
「何か気になりますか?」
「……うん、糸には話しておいた方がいいわね。ココ、永久も聞きなさい。二次試験の試験官だった、緑色の髪をした人は……私のペアだったの」
「え……ということは……」
足がガクガクと震える。
鶴先生が発する言葉に集中して口を見た。
「そう……恭さんの教え子よ」
きょ・う と言ったと口の形でも認識する。
父の教え子から、組織に反旗を翻す者が現れてしまったのかーー。
こんなこと……あってはならない。
「……組織から反逆者が出たってことですか」
永久さんが鶴先生に確認する。
「……ええ、そういうことになるわね。私は本部に報告に行くから、あなたたちは今日はもう休みなさい」
「そんな……」
ココちゃんは鶴先生を心配しているのか、不安げな顔だ。
「……鶴先生」
自分のペアが反逆者になったのだ。
こんな辛いことを……鶴先生の口から言わせなければいけないなんて。
やりきれない。
「大丈夫よ、糸」
私の気持ちを理解したかのように、鶴先生が肩をポンと叩いた。
グッと唇を噛む。
「糸! 永久! ココ! 鶴ちゃん!」
全員が一斉に声の主に顔を向ける。
「「神先生!」」
生きてる……!
よかった……!
私と永久さんは、駆け寄ってくる神先生に勢いよく抱きついた。
「どうしたどうした! あれ〜? 俺、モテ期きちゃった感じ?」
いつも通りにおどける先生。
ぎゅっとしがみつきながら、背中をバシバシ叩く。
《子》と《巳》は、神先生を追っていたが、会わなかったのだろうか。
何にせよ、神先生が無事でホッとする。
「痛い痛い〜! どうしたんだよ、糸と永久は! 赤ちゃん返りかい? ははは」
はははと笑う神先生に、心配させんな!という気持ちで、さっきよりも強く背中を叩いた。
「心配させないでください!」
驚くほど大きな声を出した永久さん。
相当心配していたのだな。
「ごめんごめん。心配させちゃったね。大丈夫だよ、俺は死なない。絶対に」
私と永久さんの背中を優しくさすってくれる神先生の手。
あたたかいな。
神先生に抱きついたまま、後ろを振り向くと、ココちゃんが微笑んでいた。
鶴先生はやはり強張った顔をしている。
その様子を見ながら、神先生が言いにくそうに話し始める。
「鶴ちゃん、緑を捕獲したよ。いや、緑じゃないか。今は《巳》と名乗っているんだったね」
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
神先生と鶴先生が行ってしまった後。
何となく道の真ん中から動けなかった。
ココちゃんも永久さんも同様に。
これからどうなるんだろうか。
神先生は《子》を取り逃したと言っていたから、捕まったのは《巳》のみ。
ヤツから十二凶のことを聞き出す他ないが……神先生が狙われていることに変わりはない。
ーータッタッタッタッ!
「糸!」
全速力でトシが向かってくる。
私たちの前で立ち止まり、手を膝に乗せて「はあはあはあ」と息を切らしていた。
「そんな急いでどうした?」
「月が……!」
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
「「月!」」
私と永久さんが同時に叫ぶ。
ココちゃんは「月くん…」と涙を浮かべた。
ベッドが起こされ、月の顔が見える。
月は左手を少しあげた。
まるで「おう!」と言ってるかのように。
トシ、ココちゃん、私、永久さんの順で、集中治療室のガラスの前に立つ。
「糸、毎日来てたんだろ! ほんと、よかったな!」
トシがニカっと笑う。
すると、月を担当している医療班の人が私たちのところまで来てくれて、月の状態を説明してくれた。
それから少し経つと、月が意識を取り戻したからか、医療班が慌ただしくなり、血圧を測ったり、点滴を変えたり、月の周りを忙しなく動いていた。
「糸ちゃん、月くん……生き返ったよ……」
まだ信じられないようで、ガラスにへばりつくココちゃん。
「おい、ココ! 月は死んでねえぞ!」
トシがココちゃんにツッコミを入れて、みんなでくすくす笑う。
同期で笑い合えたのはいつぶりだろうか。
ああ……月が意識を取り戻して、本当に良かった。
ココちゃんのセリフで月が戻ってくるのだと、改めて実感する。
そう思ったら、緊張の糸が解けたのか、思わずいろんな思いが込み上げてきた。
月が話せるようになったら、まず初めに何を話そう。
今日までのことをあれやこれやと思い出す。
……話したいことがありすぎるな。
涙をグッと堪えていると、永久さんが私の手をぎゅっと握った。
いつもなら解かなければと思う手もなぜか話すことができない。
ーーきゅっ。
優しく永久さんの手を握り返す。
私たちが手を繋いでいることを、誰も気づいていない。
そして、近づきつつある地球の危機にも、このときは誰も気づいていないのだったーー。
私とココちゃんと永久さんは、強張っていた体をやっと緩めた。
鶴のような美しい見事な一撃だったな。
「糸、永久。大丈夫だった?」
鶴先生の優しい声に、改めて安堵する。
それから、私と永久さんは、《子》と《巳》のこと、神先生が狙われていること、十二凶の計画、彼らが宇宙人を操っていることなどを簡潔に話した。
「……そうなのね」
鶴先生が難しい顔をしている。
「何か気になりますか?」
「……うん、糸には話しておいた方がいいわね。ココ、永久も聞きなさい。二次試験の試験官だった、緑色の髪をした人は……私のペアだったの」
「え……ということは……」
足がガクガクと震える。
鶴先生が発する言葉に集中して口を見た。
「そう……恭さんの教え子よ」
きょ・う と言ったと口の形でも認識する。
父の教え子から、組織に反旗を翻す者が現れてしまったのかーー。
こんなこと……あってはならない。
「……組織から反逆者が出たってことですか」
永久さんが鶴先生に確認する。
「……ええ、そういうことになるわね。私は本部に報告に行くから、あなたたちは今日はもう休みなさい」
「そんな……」
ココちゃんは鶴先生を心配しているのか、不安げな顔だ。
「……鶴先生」
自分のペアが反逆者になったのだ。
こんな辛いことを……鶴先生の口から言わせなければいけないなんて。
やりきれない。
「大丈夫よ、糸」
私の気持ちを理解したかのように、鶴先生が肩をポンと叩いた。
グッと唇を噛む。
「糸! 永久! ココ! 鶴ちゃん!」
全員が一斉に声の主に顔を向ける。
「「神先生!」」
生きてる……!
よかった……!
私と永久さんは、駆け寄ってくる神先生に勢いよく抱きついた。
「どうしたどうした! あれ〜? 俺、モテ期きちゃった感じ?」
いつも通りにおどける先生。
ぎゅっとしがみつきながら、背中をバシバシ叩く。
《子》と《巳》は、神先生を追っていたが、会わなかったのだろうか。
何にせよ、神先生が無事でホッとする。
「痛い痛い〜! どうしたんだよ、糸と永久は! 赤ちゃん返りかい? ははは」
はははと笑う神先生に、心配させんな!という気持ちで、さっきよりも強く背中を叩いた。
「心配させないでください!」
驚くほど大きな声を出した永久さん。
相当心配していたのだな。
「ごめんごめん。心配させちゃったね。大丈夫だよ、俺は死なない。絶対に」
私と永久さんの背中を優しくさすってくれる神先生の手。
あたたかいな。
神先生に抱きついたまま、後ろを振り向くと、ココちゃんが微笑んでいた。
鶴先生はやはり強張った顔をしている。
その様子を見ながら、神先生が言いにくそうに話し始める。
「鶴ちゃん、緑を捕獲したよ。いや、緑じゃないか。今は《巳》と名乗っているんだったね」
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
神先生と鶴先生が行ってしまった後。
何となく道の真ん中から動けなかった。
ココちゃんも永久さんも同様に。
これからどうなるんだろうか。
神先生は《子》を取り逃したと言っていたから、捕まったのは《巳》のみ。
ヤツから十二凶のことを聞き出す他ないが……神先生が狙われていることに変わりはない。
ーータッタッタッタッ!
「糸!」
全速力でトシが向かってくる。
私たちの前で立ち止まり、手を膝に乗せて「はあはあはあ」と息を切らしていた。
「そんな急いでどうした?」
「月が……!」
°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。
「「月!」」
私と永久さんが同時に叫ぶ。
ココちゃんは「月くん…」と涙を浮かべた。
ベッドが起こされ、月の顔が見える。
月は左手を少しあげた。
まるで「おう!」と言ってるかのように。
トシ、ココちゃん、私、永久さんの順で、集中治療室のガラスの前に立つ。
「糸、毎日来てたんだろ! ほんと、よかったな!」
トシがニカっと笑う。
すると、月を担当している医療班の人が私たちのところまで来てくれて、月の状態を説明してくれた。
それから少し経つと、月が意識を取り戻したからか、医療班が慌ただしくなり、血圧を測ったり、点滴を変えたり、月の周りを忙しなく動いていた。
「糸ちゃん、月くん……生き返ったよ……」
まだ信じられないようで、ガラスにへばりつくココちゃん。
「おい、ココ! 月は死んでねえぞ!」
トシがココちゃんにツッコミを入れて、みんなでくすくす笑う。
同期で笑い合えたのはいつぶりだろうか。
ああ……月が意識を取り戻して、本当に良かった。
ココちゃんのセリフで月が戻ってくるのだと、改めて実感する。
そう思ったら、緊張の糸が解けたのか、思わずいろんな思いが込み上げてきた。
月が話せるようになったら、まず初めに何を話そう。
今日までのことをあれやこれやと思い出す。
……話したいことがありすぎるな。
涙をグッと堪えていると、永久さんが私の手をぎゅっと握った。
いつもなら解かなければと思う手もなぜか話すことができない。
ーーきゅっ。
優しく永久さんの手を握り返す。
私たちが手を繋いでいることを、誰も気づいていない。
そして、近づきつつある地球の危機にも、このときは誰も気づいていないのだったーー。


