地球を守るお嬢様は完璧なのに恋を知りません!

 空飛ぶ車が、昼間の青空に浮かんでいる。
 2X85年。
 人類は、空を飛ぶことにも宇宙を身近に感じることにも、もう慣れていた。
 私、天城糸(あまぎ・いと)は、11時に開始する試験に歩いて向かう。
 幼馴染の黒羽月(くろば・つき)とともに。

ーーゴオオオオ。

「……また来る。逃げてください!」

 月が周囲の人に声をかけた。
 町の上空に、警告音が響く。

ーーウィーン、ウィーン!

【隕石接近。隕石接近。市民はただちに避難してください】

(警告音パターンB、落下まで平均6.2秒、着弾半径200メートル以内――過去12件と一致)

「糸! 東だ!」

「わかってる」

 先ほどの警報が鳴ってから1秒。
 落ちる隕石の方角へ全力で走る。
 こんな大事な日に…迷惑な宇宙人だ。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 この10年、地球には“頻繁に”隕石が落ちてくるようになった。
  2X75年に起きた「第一次宇宙大戦」ーー宇宙人との戦争だ。
 命をかけて地球を救ったアースシールド♾️ーー地球を守る組織。
 そして、その戦争の第一線で命の灯火が消えるまで戦った隊長だった父と副隊長だった母。
(父の最終任務コード、母の戦術ログ、全部、頭に入っている)
 その宇宙人との戦いを、同盟というかたちで終息させた祖父。
 同盟を結んでから10年が経ったが、同盟といっても、ただの口約束みたいなもので。
(同盟条約第三条第二項。「不可侵努力義務」――破られる前提の文章)
 同盟後、宇宙人は、大きな戦いは起こしていない。
 ただ、自然現象で起きたかのように見せかけて、隕石を地球に降らせている。
 隕石といっても、ただの岩じゃない。
 宇宙人が放つそれは、正体不明のエネルギー反応を持つ隕石。
 その岩を調査し、回収すれば、何者かの手でそれが放たれたことは明らかで。
 エネルギーを帯びた隕石というだけで厄介なのに、ときには――中から現れる“宇宙生命体=敵”と戦わなくてはならない、危険な世の中だ。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 私と幼馴染の月はアースシールド♾️候補生だ。
 候補生には、特殊スーツと、宇宙人もしくは宇宙生命体のみを撃退できる銃が与えられている。

「スーツ起動」

 日常的には使用していないので、スーツを起動し、いつでも攻撃できるように銃を抱えながら目的地へと向かう。

ーーブォーン!

「「「「ぎゃーーーーー」」」」

 爆風と悲鳴。

「小型か、数体いる」

「まじか! これは結構まずいな…」

ーーギチ、ギチギチ。

 嫌な音がして、記憶の中のケースと一致させる。
(ケースNo.42。小型寄生型。初動が遅い代わりに、群れる)

「月、数は?」

「まだ見えねぇ!」

「見えた」

 一歩、前に出て、銃を構える。
 亀裂の奥から、黒い影が――3、5、8。
(最低8体、最大12体。弱点は関節部)

「このケースは、群れていたとしても12体以下だ」

 影が飛び出してこちらに向かってくる。
 獣でも虫でもない、歪な“何か”。

ーーギィィィィ!

「うっわ、気色わりぃ!」

「集中しろ。弱点は関節部だ」

 照準をを合わせて引き金を引く。

ーーズドン!

 一体が地面に叩きつけられる。
 続けざまに、二体、三体。
(弾数、残り27)

「糸、相変わらず正確すぎだろ!」

「記憶してるだけだ」

 飛びかかってきた一体を、回転しながらかわす。
 背後に回った瞬間、関節を撃ち抜いた。

ーーグシャッ。

 動きの癖からして去年発生した小型と同じだ。
 でも――。

「……チッ」

 隕石の中心が、さらに明るくなる。
 記憶が頭の中で一気に並び替えられる。
 (過去の戦闘、訓練、失敗例)
 父と母のログ。

「月、下がれ!」

「は?」といいながら月が私の隣まで下がる。

「次は自爆してくる」

 言い終わる前に、隕石が――弾けた。

ーーゴォン!!

 衝撃波が襲ってきて、腕で遮る。
(爆心から3メートル。安全圏)
 想定内だ。
 煙の向こうで最後の一体が、こちらを睨んでいる。
 だが、引き金を引く指に、迷いはない。

ーーバン!

 影は、音もなく崩れ落ち、静寂が流れた。

「……終わったか?」

「制圧完了だ」

(討伐時間、47秒。過去最短)