アースシールド♾️

 巨大生命体を倒した後。
 みんな「はあはあはあ」と息を漏らしながら、その場にしゃがみ込む。

ーーピロリン、ピロリン、ピロリン。

 すると、腕に巻いた端末から音が鳴った。
 全員が端末に視線を向ける。

【特異型発生のため試験中止。速やかに入場した門まで移動を命ずる。怪我人は救護隊が向かうため、端末から連絡せよ】

 くそ。
 試験中止なんて……。

「私たちはここで特異型を倒したけど、ほかの場所でも発生しているのかもしれないね」

 ココちゃんの発言にみんなが顔を見合わせた。

「げ! こんなのが他にも発生してんのかよ! てか、いってえええ!」

 月が足をかかえてジタバタしている。
 さっきの戦いで痛めた足だろう。

「月、大丈夫か?」

 近寄って月のズボンの裾を躊躇なく捲る。

「痛い痛い! 糸、あまり動かさないでくれ!」

「我慢しろ」

 目をギュッとつぶる月。
 昔から自分の怪我や傷を見ることができないタイプなのだ。
 足の具合を確認すると、赤くなり、腫れ始めていた。

「永久さん、肩を貸してもらえますか。月をふたりで抱えたくて」

「ああ」と言いながら、永久さんがトコトコと隣まできた。
 私の背中にぽんと優しく手を置く。
 なんてあたたかい人なんだろう。
 いつも自分が背負わなくてはと思っていたものが、フッと軽くなるような気分だ。

「糸、お前は疲れてるだろ。月は俺が手を貸すから大丈夫だ」

 私に微笑みかけて、月の腕を肩に回す。

「俺も手伝うわ!」

 トシが駆け寄ってきてくれて、反対側の腕を持った。
 月は「悪いな」と言いながらも、ふたりが手を貸してくれたことを安心しているようだった。
 
「とにかく、全員で門に向かいましょう。攻撃してくるヤツがいれば連携して倒すということで」

 私の言葉に全員が首を縦に振った。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 森を全員で無事に出た。
 扉まで着いたところで、月のことは、救護の人に引き渡した。
 本人は「やっぱ、痛くねえ!」と言い張っていたが、コブのように足首が腫れ上がっていた。
 救護の人は有無を言わさず、月をタンカーで運んで行った。
 あれは、折れてるだろうな。

「本日の試験は中止です。二次の結果は近日中にに連絡します。三次試験については現状未定です。本日の試験は……」

 数人の運営委員が扉の前で大きな声で繰り返していた。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 基地の出口までゾロゾロ歩いていると、前にいたトシが振り返ってみんなの顔を見た。

「一応、連絡先交換しとく?」

「ああ」と永久さん。
「そうだね」とココちゃん。
「しょうがないわね!」とサキちゃん。

 それぞれの個性が出ているな。
 連絡先を交換して、グループチャットを作る。

「月もあとで招待しとく」

「おう! よーし、連絡先も交換したし、今日は帰るか〜。ふんふふーん♪」

 トシが両手を頭の後ろに回して、鼻歌を歌い始める。
 特異型と対面して余裕でいられるのは、ここにいる5人だけではないだろうか。
 あの強さの宇宙生命体と戦ったことがある人間は、私も含めていないはずだ。
 集団で歩いていた中から、サキさんが一歩前に出る。

「私は一応、月の様子を見てから帰るわ! ペアだったしね」

 そう言って、救護室に駆け足で向かったサキさん。
 意外と義理堅いのだな。
 「またね」「またな」とみんなで見送る。

「糸ちゃん」

 すると、ココちゃんが私隣にぴたりとくっついて、耳元でささやいた。

「ん?」

「あの……今朝の約束……。その……来週にでもうちに来ない?」

 少し不安そうに私の顔を見たココちゃん。
 私は微笑み、こくんと首を縦に振る。

「ありがとう……! 楽しみ。お父さんにも話しておくね。また連絡するね」

「ああ…ありがとう」

 ふたりでコソコソ話していると、少し先で両手を広げてフリフリしているトシが私たちを呼んだ。

「おーい! 何やってんだ、ココ! 糸! 帰るぞ!」

 ココちゃんが「そういえば……月くんとのとこ、行ってあげないの?」とトシの声かけがなかったかのように続けた。
 そうだな。
 迎えに行ってやらないとまだブーブー言われそうだ。

「私はサキさんを追いかけて月のところにいく。トシ、ココちゃん、永久さん。また」

 私もサキさんの後を追い、方向転換する。
 みんなに手を振って別れた。

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 救護室は……。
 建物の中に入り、室内マップを確認する。
 この廊下を端まで行けば辿り着くな。

 歩きながら、試験を振り返る。
 特異型が出てきたときはどうなるかと思ったが、みんなのおかげで制圧することができた。
 永久さんもトシもココちゃんも強かったな。
 それに、チームで戦うとこんなにも心強いのだな。
 私ももっと力をつけなければ、隊長には程遠い。
 後ろから足音が聞こえてきて、気になってパッと振り向く。

「俺も行く」

「永久さん!?」

 私の頭にポンっと手を置いた。
 どうしたんだろうか。
 なんで、永久さんも月のところへ?
 何か伝えることでもあるのだろうか。

「月のことは、私に任せてもらって大丈夫です。伝言があるなら伝えておきます。永久さんは疲れを取るために帰っ……」

「疲れてない」

 永久さんは強めに言って、手を離した。
 あの特異型から囮として逃げ続けて、疲れてないわけないと思うが。

「……行くぞ」

 腕を掴まれて、引っ張られるように救護室に向かった。

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 病室に入ると、月がベットに横たわっていた。
 その横にはサキさんが立っている。

「折れてなかったみたいで安心したわ」

 サキさんが湿布を貼られた月の足をバシバシ叩く。

「いてーよ! やめろ!」

「ヒビでよかったな」

「……心配させるな、月」

 永久さんと月の足元に駆け寄る。

「糸、あれはこの通り大丈夫だ! 心配すんな! 永久まできてくれるなんてな、ありがとな。って! だからいてーってば! サキ!」

 叩き続けるサキさんを制しようと月が暴れている。
 サキさんは手を止めると、永久さんの隣に立って顔を覗き込んだ。

「じゃあ、月が元気そうなことも確認したし、私は帰るわね。トワ様、連絡しますね♡」

 サキさんは、ウィンクをして、捨て台詞を放ち、病室から出ていった。
 嵐のような人だな。
 先ほどサキさんが立っていた位置に回り込んで、月の足にそっと触れた。

「月、家の車を呼ぶから一緒に帰ろう」

「おう、いつも悪いな」

 月は少し顔を赤らめて私を見つめる。
 疲れが出て熱でも出たのだろうか……?

「永久もありがとうな。もう大丈夫だぞ、俺は糸と帰るから」

「……」

 月の足元に立つ永久さんは私と視線を合わせた。
 どうして黙っているのだろう。
 あ、もしや、車に乗って行きたいのか。

「永久さんも乗って行きますか?」

「……いや」

 何か言いたげな顔だな……。

「糸ん家の車、ちょーでかいから気を遣わなくていいぞ」

「10人は乗れるので大丈夫です」

 やはり疲れているのだろうか。
 心配になって、永久さんに駆け寄る。

「……俺はいい、歩いて帰る。じゃあな」

ーーバシっ!

「いってー! 何すんだよ! 永久まで!」

 永久さんが月の足を強めに叩いた。
 その後、スタスタと病室の扉の前まで歩いていく。

「なんでふたりでいることが当たり前のようなんだ…」

 何かをボソッと言った永久さん。

「月、家の車を呼びながら、永久さんを送ってくるから」

 月のベッドから離れて永久さんのもとへ行く。

「おーう!」と月が手を振った。

「永久さん、行きましょう」

「ああ」

 横並びになり、ふたりで病室を後にした。