地球を守るお嬢様は完璧なのに恋を知りません!

 私は、忘れることができない人間だ。
 初めて自覚したのは、3歳と7か月。
 母が読んでくれた絵本。
 ページをめくる音。
 15時22分、カーテン越しの光。
 すべて、今も同じ解像度で再生できる。
 人は「覚えている」と言うけれど、私の場合は保存だ。
(上書き不可、削除不可、改変不可)
 必要なときに、必要なだけ取り出せる「記憶」。
 感情も、音も、匂いも、配置も。
 だから、迷うことがない。
 選択肢は、すでに過去に存在しているからだ。
 小学校に上がる前から、大人たちの会話を正確に繰り返すことができた。

「どうして覚えてるの?」
「すごいね」

 そう言われるたび、首をかしげた。

 ――世界は危険。
 それを知ったのは、5歳のとき。
(第一次宇宙大戦の戦死者数8000万人以上)
 ニュースの映像や防空警報。
 目と耳から入る情報全てが私の脳に蓄積された。
 そう、この戦争で父と母が死んだ。
 忘れたい過去も忘れることができない。
 だから決めた。
 この「記憶」を武器に、父と母のように地球を守るのだとーー。
 感情に流されず、恐怖で判断を誤らないように。
 過去の失敗を、二度と繰り返さないように。
 人は、経験で強くなるという。
 私は、記憶で強くなるのだ。
 教本、訓練映像、過去の戦闘ログ等の記憶。
 ――これは、私だけに与えられた、スキル。