ハロー

何か理由をつけて部屋から出ないようにしたい。でも、そんなことを両親は許さない。未来は暗い心でパジャマを脱ぎ、前日に用意してあった服に着替える。姉のお下がりのブラウンのワンピースだ。大人っぽい姉にはよく似合っていたこのワンピースは、幼い顔立ちの未来が着るとどこかチグハグである。

教科書の入った重いランドセルを持ってリビングに行くと、父と兄と姉、そして母親はすでに朝ご飯を食べているところだった。母親がスマホを見ながら言う。

「未来!遅い!さっさと自分の分のご飯準備して食べなさい!」

「……うん」

未来は炊飯器を開けて白米を茶碗に入れる。味噌汁も温め直した。未来の食事は、いつも皿に盛り付けられることはない。

『何もできない奴は努力していないのと同じ。何もできない奴は自分のことは自分でやれ』

それがこの家のルールだ。未来が冷蔵庫を取り出して海苔を出していると、コーヒーを飲んでいた父親が口を開く。

「今日から新しいプロジェクトが始まるから、帰りが遅くなるかもしれない」