「は? 待て、何を言っているのか分かっているのか? 一つのベッドで一緒に寝るってことだぞ? 危険だとは思わないのか?」
シドリウスはフィリーネの両肩を掴んで思い直すように諭す。
フィリーネは明るい調子で言った。
「一つ屋根の下で一緒に寝ているのですから、ベッドが同じだろうとなかろうとそう大差ありませんよ」
「いやいや、全然あるからな。大有りだからな。世間体を考えると外聞が悪い。……さては、また俺を試そうとしているな?」
シドリウスは別の角度から自分を誘惑していると思っているようだ。
フィリーネは首を横に振り、真剣な顔で否定した。
「試していません。それと、私は将来シドリウスに食べられる身です。世間体なんて気になりません」
「フィーが気にならなくても俺が気にするんだが」
「私はシドリウス様の体調の方がよっぽど気になります。このままでは手遅れになりますよ!」
「いや、だからと言って一緒に寝るのは……」
一緒に寝る寝ないの押し問答の末、フィリーネがくしゅんと可愛らしいくしゃみをしたところで、とうとうシドリウスが折れた。
「はあ。分かった。フィーが風邪をひいたら大変だし、今回は俺の負けだ」
「ありがとうございます。って、きゃあ!!」
フィリーネはシドリウスに抱き上げられる。所謂、お姫様抱っこの状態だ。
驚いて困惑している間に、シドリウスが颯爽と中庭を突っ切っていく。
「シドリウス様、私なら歩けます。重いので下ろしてください」
「痩せているのに何が重いか。フィーは羽のように軽いぞ。それと暴れるな。うっかり落として大怪我をさせてしまうかもしれない」
「うっ、分かりました」
大怪我と言われて怖くなったフィリーネは、大人しく抱かれることにする。
前を向いて歩くシドリウスの顔には、悪戯な笑みが浮かんでいた。



