「確かにおまえは湖に落ち、生贄の花嫁として俺に捧げられた。だがその前に、おまえは私の大事な番だ」
「……番?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
数秒ほど経って、頭の理解が追いついたフィリーネは目を剥いた。
「ええっ!! 私がシドリウス様の番なんですか!? じゃあ食べるっていうのは物理的な意味ではないということですか!?」
矢継ぎ早に質問を続けると、シドリウスが大きく頷いた。
「ああ、そうだ。そもそも竜人は人を食べない。生贄の儀式を禁止したのもこちらとしては困っていたからだ。もともとはただの祭祀に過ぎなかったのに、いつの間にか生贄の儀式へと変わってしまったんだ」
湖に乙女が投げ込まれる度にシドリウスが察知して助け、エリンジャー家が遠い地で暮らせるように手配をしていたらしい。
事実を知ったフィリーネは開いた口が塞がらない。
しかし、すぐに大切なことを思い出す。
心臓の鼓動が一気に加速した。
「ということは、私がシドリウス様を好きなままでも問題ないんですね……嬉しいっ」
この感情は一方通行で終わる。成就することは決してない。だからシドリウスには伝えないでおこう――そう思っていたのに。
もう自分の感情に蓋をしなくていいと分かった途端、思わず溢れ出た感情をシドリウスに伝えてしまった。



