迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



(じきにフィーの誕生日だ。成人して皆にお披露目するのが楽しみだ)
 番が見つかったと公表したら、貴族たちは番がどんな人物なのか食いついてくるに決まっている。彼らに受け入れてもらえるよう、フィリーネの印象は良くしておく必要がある。
 そこでシドリウスは家庭教師志望だったカロンをフィリーネに付けた。カロンの働きぶりは想像以上で、シドリウスの目論み通りとなった。

 フィリーネの優雅な所作を目にしたら、誰も何も言えないだろう。
(まあ、貴族たちの反応を心配するより先に、俺がフィーに気持ちを伝えて確かめないといけないがな)
 シドリウスは口をきゅっと引き結ぶ。

 正直なところ、フィリーネに告白をして良い返事をもらえるか不安で堪らない。
 竜人は人間のように『好き』を育む過程がない。番だと分かるとすぐに愛してしまう。
 人間と竜人の違いに焦れったさを感じずにはいられないが、大事な過程なのでいい加減にするわけにはいかない。


 嘆息を漏らしたシドリウスは、気を取り直して飲み物を取りに移動する。
 すると、目の前にヒュドーが現れた。その手には手紙が握られている。

「先ほど、鳩の姿をした風の精霊から手紙が届きました」
 ヒュドーから手紙を受け取って差出人を確認する。相手はギデリウスからだった。
「やっと返事が来たのか」
 シドリウスはヒュドーと共に大広間から外の廊下へ移動する。

 二つ折りの手紙を封筒から取り出して、内容に目を走らせた。
「先代は何と仰っているのですか?」
 一通り読み終えたシドリウスは、ヒュドーの問いに端的に答える。