「もし嫌でなければ、フィーも一緒に舞踏会へ行かないか?」
「わ、私は招待状をもらっていません」
なんとも畏れ多い提案にフィリーネは上擦った声で返してしまった。
「俺も招待状は持っていない。だが、ヒュドーとカロンの二人の友人としてなら招待状がなくとも参加できる。成人してから空都でぶっつけ本番で踊るより、場数を踏んで置いた方が良いと思う。舞踏会の雰囲気も把握できるしな」
「その提案は非常にありがたいのですが……」
フィリーネは言葉を濁すと俯いた。
期待と同時に一抹の不安を覚えるのは、その舞踏会にミリーネとハビエルが参加するからだ。
オルクール王国の貴族には参加すべき舞踏会が二つある。
一つは空都で開かれるエリンジャー家主催の舞踏会で、王国の舞踏会の中で最も参加人数が多いとされている。
そしてもう一つが、ランドレイス家主催の舞踏会だ。こちらはエリンジャー家ほどではないが、地上で開かれる舞踏会の中では最大と言われている。
特に、国内で活躍する精霊師の一族や新規事業で成功を収めた郷紳など、この国を支える有力者たちが一堂に会するため、人脈を広げるには打ってつけの場だ。
この機会に目的の相手と親交を深めたいと目論んでいる者も少なくない。
(私の記憶が正しければ、去年はそこでお父様が羽振りの良いプセマ準男爵とお知り合いになりました)
ビジネスにはあまり詳しくないが、屋敷を出入りするようになった準男爵の顔つきが良くなかったのは覚えている。
人を見た目で判断してはいけないが、どことなく胡散臭かった。とはいえ、忌み子であるフィリーネが意見できる立場ではないため、ただただ黙っておくしかなかったが。



