迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



「アーネスト様に愛されないのはおまえの力不足だろうが。彼に話すのが無理なら一刻も早く公爵様を治して目覚めさせろ。義娘の頼みなら喜んで出してくれるだろうよ」
 わざとらしくため息を吐いたハビエルは、葉巻に火をつける。
「用が済んだのなら下がりなさい。どうやってランドレイス家から金を引き出すかよく考えるんだな」
 ぷはっと煙が吐き出され、室内はより一層葉巻の煙と匂いが充満する。
 俯くミリーネは頬を押さえたまま、書斎を出た。


(借金はお父様の自業自得なのに、私に八つ当たりされても困るわ。……ああ、服についた葉巻の匂いは取れるかしら)
 部屋に戻ったら、マーシャを呼んで着替えを手伝ってもらおう。
 ミリーネは服の裾を嗅ぎながら廊下を歩き始める。


 どうしてこんなに惨めな気持ちになるのだろう。
 ふと、ミリーネはフィリーネの幸せそうな様子を思い出す。
 美青年から大切に扱われるフィリーネが羨ましくて堪らない。
 羨望という感情が嫉妬へと変化していくのが自分でも分かる。

(何の取り柄もないのに、あれが私より愛されるなんておかしいわ。私の方が光の精霊師で凄いのに。私の方が何倍も努力して綺麗なのに……)
 ミリーネは拳を握り締める。

「私の方が優れている。愛されて当然なのはこの私なの……」
 ブツブツと呟くミリーネは誓う。

 ハビエルが何と言おうと、フィリーネからあの美青年を絶対に奪ってみせると。
(ランドレイス家の舞踏会にあの美青年が参加する。だったら……)
 ミリーネは、頭の中で今度の舞踏会で行動に移すための計画を立て始めた。