迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



 必死に引き留めるが、アーネストは構わず執事を伴って踵を返していった。
 残されたミリーネは、すかさず側で控えていた侍女に声をかける。

「ちょっと、どうにかしてアーネスト様を連れ戻してちょうだい」
 侍女は表情を変えず、深々と頭を下げて言う。
「申し訳ございませんお嬢様、私にそのような権限はありません。どうか今はお寛ぎになってくださいませ」
「はあ? 最初から諦めるの? どうやったらできるのか考えなさいよ!」

 叱責するものの、侍女は平謝りに謝るだけで結局何もしてくれなかった。
「この役立たず。もういい。帰る!!」
 お茶を胃に流し込んだミリーネは、怒りを抱えたまま公爵家を後にした。



 馬車に乗り込むと、腕を組んでぎりぎりと親指の爪を噛む。
(結婚して嫁いだら、あの無能な侍女は絶対にクビよ。あんなのが公爵家で働いているなんて許せない!)
 あの侍女の顔はしかとこの目に焼きつけている。

 自分が公爵夫人となり、屋敷を管理するようになった暁には、暇を出してやろうとミリーネは誓った。次に、怒りの矛先はエリンジャー家へと向かう。
(エリンジャー家の者は遠慮って言葉を知らないのかしら。竜王陛下とランドレイス家の伝書鳩みたいなものなのに出しゃばらないで欲しいわ。舞踏会に関する話らしいけど、どうせ大した内容じゃないんでしょ)