迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



 次の日、光の精霊師としてミリーネはランドレイス家の古城を訪ねていた。
 執事に公爵が眠る寝室へ案内される。

 ベッドに横たわる公爵は血の気がなく、頬は痩けていた。前回の治療で訪れた時よりも、容態が悪化しているのは明らかだった。
「公爵様、ミリーネ=アバロンドです。本日も治療にあたります。身体を楽にしてくださいませ」
 ミリーネは両手を広げると召喚呪文を唱えた。

「精霊界より契約者の声に応え、姿を現せ。我に力を貸したまえ」

 ミリーネの声に反応するように彼女の足下に黄金の粒がいくつも現れる。
 それらはミリーネの身体を軸として回転しながら、上へ上へと登っていく。
 そして肩の辺りに到達すると、光の粒が一つとなり、黄金の猫が姿を現した。

 猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら、ミリーネの肩の上にのり、長い尻尾を揺らしている。
「ニア、公爵様を癒やしていくから力を貸して」
「ミァ!」

 ミリーネはランドレイス公爵の手を握り締めると、自身の額に当てる。
 たちまちミリーネの全身が輝き始め、その光がランドレイス公爵の身体に移って黄金に輝き始める。
 ミリーネは光の精霊師としてランドレイス公爵の身体を癒やしていった。

 夢塞病で目覚めない公爵が何も食べずに無事でいられるのは、ミリーネの治療の賜物だった。
 こうして一時間かけて、公爵の治療は完了した。