「ミリー、明日ランドレイス家に行くんだろう? だったら援助してもらえないか訊いてみるんだ。うちが困っていると知ったら、あちらも手を貸してくれるはずだ」
「だけどお父様……」
ミリーネは言葉を詰まらせる。
ランドレイス公爵が倒れて数ヶ月。彼は夢塞病に侵されていて、ミリーネは定期的に公爵家に通い、光魔法で治療に当たっている。しかし、公爵が目覚める兆しはまるでない。
何故なら、ミリーネが行っているのは夢塞病の治療ではなく、体力の回復だからだ。
光魔法は怪我や体力を回復する治癒の魔法に特化しているだけで、精神系の病は治せない。
そうなると、援助の話はアーネストに頼むほかないのだが、婚約者のミリーネを顧みない彼に借金を抱えていると伝えたら、婚約解消の口実になるかもしれない。
(無理よ。アーネスト様には口が裂けても援助してだなんて言えないわ)
ミリーネが口を開きかけると、ハビエルに遮られる。
「頼みの綱はおまえだけだ。何をそんなにもたついているのかは知らんが、さっさと公爵の病を治してしまえ。でないと私たちは赤貧洗うがごとき生活を送る羽目になるぞ。分かったな?」
ハビエルは光魔法がなんでも治せてしまう優れものだと勘違いしている。幾度となくミリーネが光魔法の特性を伝えているが、まるで理解していない。



