迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



(どうせどこかで生きているに違いないわ。忌み子は雑草並みにしぶといもの。帰ってこないのは、私が二度と屋敷に戻ってくるなって言ったのを真に受けているからよ。まったく、これだから教養のない愚か者は困るわ)

 ミリーネは鏡に映る自分を見る。苛つきすぎて眉間に皺が入っている。
「忌み子に気を取られてはいけないわ。お手入れしたばかりなのに効果が薄れてしまう」
 眉間の皺をなくすべく指で押さえていると、突然ハビエルが部屋に入ってきた。

「お父様、レディの部屋にノックもなしに勝手に入ってこないでくださる?」
 咎めるミリーネだったが、ハビエルの様子を見て態度を改める。
「どうしたの? 顔色が悪いわ」
 疲れ果てているハビエルは身体を引きずるようにして近づいてくると、ミリーネの両肩を掴んできた。


「ミリー、折り入って頼みたいことがある。おまえの持っている宝飾品をいくつか私に譲ってくれないか?」
「え? どうして?」
「……前にプセマ準男爵との商談があると言っていただろう? あれは鉱山採掘の投資話だったんだが、大損してしまった。それに加えて領地で落石事故が発生して大規模な整備も必要になった。要するに我が家は今、莫大な借金を抱えている」
「なんですって!?」

 ミリーネは素っ頓狂な声を上げた。
 どれほどの損害を被ったのかは、ハビエルの切羽詰まった態度で一目瞭然だった。

 宝飾品を譲って欲しいと実の娘に頼んでくるくらいなので、完全に首が回らなくなっているらしい。
 これまで先代伯爵たちが築き上げた財産でも支払えないのなら、あとは領地やこの屋敷を売るしかない。最悪の場合は、爵位も視野に入れないといけない。

 由緒正しい光の精霊師一族であるアバロンド家が窮地に陥るなんて夢にも思わなかった。
 肩を掴むハビエルの手に力が籠もる。