特にアーネストの冷淡な態度に拍車がかかったのは、ランドレイス公爵が倒れてからだ。
二人で過ごす時間はどんどん減っていき、出かけることすらままならない。以前なら会えない時でも手紙を送ってくれていたが、近頃はそれすらもなくなってしまった。
アーネストの心は完全に冷めている。特にそれが顕著に表れ始めたのは、フィリーネと会ってからだ。
きっと、フィリーネがアーネストに良からぬことを吹き込んだに違いない。
でなければ、アーネストの態度がここまで悪化することはなかった。
(忌み子は私の印象を悪くするためにわざわざ階上にやって来て、根も葉もない話をしたんだわ。ああ、イライラする! ていうか、なんで行方不明になるのよ!)
ミリーネは親指の爪を噛む。
マツの木と結婚を言い渡したあの日、フィリーネは自力で帰ってくるだろうとミリーネは高を括っていた。ところが、二、三日経ってもフィリーネは帰ってこず、そうこうしているうちに商談に出かけていたハビエルが屋敷に帰ってきた。
事実を知ったハビエルからは散々叱られた。
すぐにマツの木がある崖へアバロンド家の騎士団を向かわせたが、そこにあったのは根元付近の幹だけだったという。
近辺を隈なく捜索したが、結局フィリーネは見つからなかった。
騎士団長の見立てでは、マツの木ごとテネブラエ湖に落ちて溺死したのではないかとのことだった。
死体がないか騎士たちに捜索させたが、とどのつまりは見つからなかった。



