迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



「フィーらしい愉快なダンスだったな」
「私、らしい?」

 きょとんとした表情を浮かべるフィリーネに、シドリウスが補足してくれる。
「今のは実にフィーらしい。周りとの調和を重んじながらも、こちらを明るくしてくれるダンスだった。他の人にあんな表現はできない」
 フィリーネは息を呑む。

 アバロンド家で抑圧されてきたフィリーネが自分自身を表現したのはこれが初めて。
 あの屋敷で自分はただの召し使いであり、屋敷の労働力でしかなかった。そこに自分らしさなんて求められないし、出したところで煙たがられるだけだっただろう。

(自分らしく表現するのって、こんなに素敵で楽しいんですね)
 自分の新たな一面と出会えて嬉しい。
 それと同時に、これだけ自分は踊れるのだという自信もついた。


「最後までよくできたな。今みたいに、貴族が踊るダンスも形式的ではあるが案外自由だ。舞踏会でもフィーのやりたいように踊るといい。きっと楽しく踊れる」
 シドリウスが優しく頭を撫でてくれる。
「ありがとうございます。なんとなくコツが掴めた気がします」

 フィリーネは目を細めて頷いた。これまで感じたことのない高揚感に包まれる。
 すると突然、周りで踊っていた男性たちが一斉にパートナーの女性たちへ贈り物を渡し始めた。
 きょろきょろとその様子を眺めていたら、シドリウスが懐から四角い黒の箱を取り出す。