迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



 シドリウスの屋敷から一番近い町は、馬車を走らせて三十分ほどの場所に位置している。
 この町は商業都市として栄えているらしく、様々な店が軒を連ねていて活気があった。
 特に繁華街は大勢の人が行き交い、賑わいを見せている。
 子供から大人まで様々な人が目的の店に向かって歩いていた。

「わあっ!」
 フィリーネは弾んだ声を上げ、辺りを見回していた。
 今歩いているのはメインストリートで、カフェや雑貨屋といった普段から住民が気軽に使う店が多く建ち並んでいる。

「そんなに物珍しいか?」
「はい、とっても。聞いていたとおり、町にはいろんなお店があるんですね!」


 因みに、先ほどから周りの視線がこちらに集中しているのは、フィリーネの気のせいではないだろう。
(無理もありません。私の隣にいらっしゃるのは破壊的な美貌を誇るお方ですから。ああ、遠くにいらっしゃる夫人がシドリウス様を見て気絶されました! あっ、あちらにいらっしゃるご令嬢まで)

 フィリーネは隣を歩くシドリウスを一瞥する。
 凜とした横顔は完璧なまでに美しく、気を抜くと胸が高鳴ってしまう。

(いけません、いけません。危うく私もシドリウス様の美貌に呑まれるところでした)
 何度も頭を振っていたら、フィリーネの心情を知らないシドリウスが声をかけてくる。


「まずは小物から揃えるとしよう」
 いつもの調子で接してくるシドリウスにまず連れてこられたのは靴屋だった。
 その次は装身具を取り扱うお店で、レースのハンカチや白の手袋など次々と買ってくれた。