彼は魅惑のバレリーノ


仕事を終えて帰ろうとしたとき、
柊くんからメッセージが届いた。

帰り20時になりそう。
先に夕飯食べてて。
ごめんっと猫のスタンプ。

「……じゃあ、作って待ってようかな。」

いつも作ってもらってばかりだし、
たまには私だって。

そう思ってスーパーに寄り、材料を買い込む。

そして――
オムライスを作った。

……はずだった。

フライパンの上で卵が破れ、
包もうとしたらさらに崩れ、
最終的に“のせただけ”みたいな見た目になってしまった。

(……これ、食べさせるの?
あの、食事に気を遣ってる柊くんに……?)

一応サラダとスープは用意した。
でも主役がこれでは、どうにもならない。

キッチンで皿を前に固まっていると――

ガチャッ。

玄関の鍵が開く音がして、
足音が近づいてくる。

「ただいま……あれ?」

顔を覗かせた柊くんが、
キッチンでフリーズしている私を見つけて目を瞬かせる。

「一華さん……どうしたの?」

優しい声。
その声だけで、胸がぎゅっとなる。

(どうしよう……見せるしかない……)