彼は魅惑のバレリーノ


深山が軽く姿勢を正して口を開く。

「改めてよろしくお願いします。
早速、話を進めていきましょうか。」

深山がスムーズに場を仕切り、
私はパソコンを取り出して資料を準備する。

柊くんは丁寧にファイルを取り出し、
テーブルに並べていく。

「これ、参考になるかと思って。
いままでの公演での物販品と、売れた数です。」

「ありがとうございます。」

私は資料を受け取り、
深山はタブレットに数字を入力しながら確認していく。

「結構数出てますね。
となると……」

深山は売れ筋の傾向を読み取りながら、
必要な数量や予算のラインを計算していく。

私は過去の物販デザインを見ながら、自然と口が動いた。

「シンプルで普段使いできるものが売れてますね。
そうなると、派手なデザインじゃない方がいいですね。」

「ですね。」
深山が頷く。

柊くんも、私の言葉に安心したように微笑む。

「その感じでお願いしたいです。」

「では、物販の内容はこんな感じで。
あとは如月のデザインですね。」

「はい。よろしくお願いします。」



細かい仕様やスケジュールを詰めていき、
無事に打ち合わせは終了した。

「今日はありがとうございました。
とても助かりました。」

柊くんの一言に深山も丁寧に頭を下げる。

「いえ。こちらこそよろしくお願いします。」

部長が席を立ち、深山も資料をまとめる。

「私、玄関までお見送りしてきます。」


私は柊くんを玄関ホールまで案内した。

エントランスの静けさの中、
柊くんがふっと柔らかく笑う。

「一華さん、色々ありがとう。」

「いえいえ。」

「今日は19時ごろには帰れると思うから、一緒に夕飯食べよう。」

「うん。このあとは仕事?」

「うん。パンフレットとかグッズのことを報告して、打ち合わせもしてくる。」

「多忙だ。」

「大したことないよ。じゃあ、またね。」

ふわっと笑って、軽く手を振りながら歩き出す。

その背中が遠ざかっていくのに、
“でもまたすぐ会える”
そう思うだけで胸が弾む。