彼は魅惑のバレリーノ

金曜日。
同居を始めてからも、この時間だけは変わらない。

柊くんが踊り、
私は大きな画材を広げて鉛筆を走らせる。

静かな空間に、彼の動きだけが流れていく。
そのリズムが心地よくて、この時間が好きになっていた。

そんなとき、彼のスマホが鳴った。

「もしもし、はい。はい。
本当ですか……困りましたね。
いえ、ちょっと他当たってみます。
ありがとうございます。」

通話を切った柊くんは、少し眉を寄せていた。
珍しい。
あの人が困った顔をするのは。

思わず声をかける。

「どうしたの?
トラブル……?」

「あー、ちょっと……。」

そう言いながら、じーっと私を見る。

……え、なに。
なんでそんな真剣に見るの。

首を傾げると、彼はゆっくり口を開いた。

「ねぇ、一華さん。
相談あるんだけど。いい?」

「え? 私でよければ。」