彼は魅惑のバレリーノ

職場にて。

「ねぇ、一華。なんか最近調子良いよね。
顔色も肌艶も髪もツヤッツヤ。姿勢も良いし。
それに最近ずっとお弁当じゃない? どうしたの?」

鋭い。
女の勘ってほんと逃げられない。

「実は…」

水漏れの件から、柊くんの家に同居している経緯を話す。

「なにそれ!? すご!!
え、まさかそのお弁当って……」

「作ってくれる……」

「やばっ。優男。」

「いや、断ったんだけどさ。
私、お昼おにぎりとかコンビニばっかりだったでしょ?
心配してくれたみたいで。」

「はぁあ……愛されてるわ。」

「いやそれは違う。
なんだろう……このよくわからない関係は。」

亜季は、腕を組んで、じーっと私を見る。

「いやいやいや。
同居して、朝一緒に起きて、朝ごはん作って、弁当持たせてくれて、
夜は一緒にご飯でしょ?
それで“よくわからない関係”は無理ある。」


「でも…」

「一華は好きなの?」

その質問に、胸の奥がぎゅっと縮む。
逃げられない。
でも、もう逃げる必要もない気がしていた。

あの人の優しさに触れて、好きにならない人っているの?
知れば知るほど、深みにハマる。
距離が近いほど、抜け出せなくなる。

「……好きになったらもう負けというか。
いられなくなる。一緒に……。」

言ってから、自分で自分に驚く。
こんなに素直に言葉が出るなんて。

「そう? 大人なんだし。
色んな形があるわよ。」

亜季はあっさり言って、私の頭をぽんと軽く叩く。

「あー……」

私は頭を抱える。
胸の中がぐちゃぐちゃで、でもどこか幸せで。

そんな私を見て、亜季はにやりと笑った。

「まあ、気まずくなったらうち来れば?」

「え? ほんと?」

「今、彼と半同棲中だけど。」

「お邪魔やん。」

「いいのよ。
あんたが恋で爆発したときの避難所くらいにはなる。」

「爆発って……」

「だってその顔、もう落ちてるもん。」

図星すぎて、何も言えない。