彼は魅惑のバレリーノ

「はい、終わり。
あとヘアオイルも塗っとくよ。」

指先が髪をすくい、毛先にオイルを馴染ませる。
ふわっとラベンダーの香りが広がって、思わず目を閉じた。

「ありがとう。」

「これ、保湿も。適当に使って。」

差し出されたクリームは、私が普段使ってるものよりずっと良さそうで、
“気遣いの塊” みたいな彼に胸がきゅっとなる。

「さ、さすがすぎる……」

「じゃあ俺も入ってくるから。
くつろいでて。飲み物も適当にどうぞ。」

「ありがとう。」

ドアが閉まった瞬間、どっと疲れと一緒に恥ずかしさが押し寄せる。

……これ、なかなか心臓に悪い。
もつのか、私。

そんなとき、足元にふわっと柔らかいものが擦り寄ってきた。

「にゃあ。」

マリアさんだ。
久しぶりの顔に、思わず笑ってしまう。

「久しぶりだね。
君の主人はど天然タラシだね。」

にゃあ、と返事。
まるで “そうだよ” と同意してるみたい。

「ほんと、あれで自覚ないんだもん……」

撫でると、喉を鳴らしてすり寄ってくる。
その温かさに、少しだけ緊張がほぐれた。

でも――
さっきの距離感、あれは反則。